白痴 – 坂口 安吾 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

白痴 (新潮文庫)
白痴

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坂口 安吾
新潮社

・いずこへ
・白痴
・母の上京
・外套と青空
・私は海をだきしめていたい
・戦争と一人の女
・青鬼の褌を洗う女
白痴の女と火炎の中をのがれ、「生きるための、明日の希望がないから」女を捨てていくはりあいもなく、ただ今朝も太陽の光がそそぐだろうかと考える。
戦後の混乱と退廃の世相にさまよう人々の心に強く訴えかけた表題作など、自嘲的なアウトローの生活をくりひろげながら、「堕落論」の主張を作品化し、観念的私小説を創造してデカダン派と称される著者の代表作7編。

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書評・レビュー・感想

表題作の「白痴」をWikipediaで調べると・・・・

重度の知的障害の古い呼び方。差別用語とされることがある。
Wikipedia : 白痴

堕落した青年をめぐる物語と戦前の空気感がなんだか新鮮に感じた。
現在の堕落した青年と当時の堕落した青年の違いなどもこの物語を通じて感じることができた。
堕落さの中になにか真面目で滑稽なところが交じり合い、その交わり方がおさまりがいいような感じする。
「白痴」もなかなか良かったが、どちらかといえば、この7作品の中では、「母の上京」を推したい。
退廃的な生活を送りながらも母の幻想に怯えるそれこそいい年をした中年。
共同体の立ち上げに失敗し、何かを掠め取るような生活をしつつもなにか品の良さを感じる作品で、読後感が一番良かった。

そのとき障子がガラリとあいて、母なる人が顔を出した。田舎から汽車にゆられてきた旅行用のモンペ姿で、白髪の姿をあらわしたのである。
夏川ははだかのヒロシを軽々と担ぐように抱き上げて、母の姿に面した。彼の顔は泣き顔だか笑い顔だか、多分誰にも見当がつかないだろう表情がこわばりついていたのである。
然し彼は威勢良く、
「ヤア、いらっしゃい」
と言った。
するとそれを合図のように、再びヒロシがキャーというはりさける悲鳴をあげたものだ。そして、両足を勢いっぱいバタバタふった。運悪くその片足の膝小僧が夏川の睾丸をしたたか蹴りつけたから、たまらない。夏川はヒロシを担いだままフラフラフラと座る姿にくずれて、激痛のため平伏してしまったのである。痛さも痛いが、これはちょうど都合のよろしい姿勢であると、ついでに心の中で久闊をのべた。こうして、彼はともかく重なる親不孝を自然に詫びることができたのである。

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