「超常現象」を本気で科学する – 石川 幹人 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 6 分

幽霊・テレパシー・透視・念力…。我々を驚かせてきた不可思議な現象の数々は、多くの人に関心を持たれながらも「非科学的」、「オカルト」と否定されてきた。だが、それこそが科学の挑むべき謎だとして、あくまでこれを「科学的」に研究してきた人々がいる。「何がどこまで解明できたのか?」。そして「何が未だに謎なのか?」。明治大学教授が、異端の科学の最先端を案内しながら、「科学とは何か?」の本質に迫る。

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書評・レビュー・感想

幽霊やテレパシー、念力といったものが「あるのかないのか」に白黒つける本ではない。
そのような気持ちで読むと肩透かしを食らうので注意が必要である。
著者は、「オカルト」は否定しているが、個人の心霊体験は、否定せず、検討の対象として社会に「役に立つかどうか」で議論することを薦めている。
例えば、著者は本書で以下のように書いている。

人によっては、「人生自体がギャンブルだ」というかもしれません。確かに、人生は良いこともあれば、悪いこともあります。しかし、そうであればこそ、大事なのは人生全体における収支の向上です。たとえば、自分にあった技能を身につけたり、平素の人間関係に気をつけたりといったことが、短期的には学費の負担や気苦労となっても、長期的に見れば、人生に良いことを増やすはずです。つまり、ランダムの影響が不可避の状態にあるとき、一時的なツキやスランプを気に留めることなく、平均した利得を長期的に向上させる方法を考えるのがよいのです。+31点から-29点までをランダムに発生させてその結果を300回累積すると少しづつ利得が平均的に向上します。(中略)ツキやスランプに執着し、そうした「運の流れ」があると感じていると、お守りを信じるスキが生じます。ツキやスランプが「ランダムのなせるわざ」と知らなければ「何かに原因がある」と思いがちになります。そして、そんなときにこそ、「お守りには効果がある」と誤認しやすいのです。(中略)人によっては、「お守りが効いたと思うことで気分が安らぐ」という主張もあるでしょう。しかし、運の良し悪しがお守りによってコントロールできると誤解したならば、長期の平均的向上に目が向きにくくなるでしょう。そのデメリットはきわめて大きい。つまり、個人の思いはさておき、「お守りは効かないとしたほうが社会的によい」と分析できそうです。

個人的には非常にバランスが取れた批評本だと思うが、超常現象否定派と超常現象肯定派には受けが悪いだろうと思われる。そのため、本書のレビューも読者がどの立場かによって大きく左右されるものと思われる。
脳科学については、最近では結構研究が進んでいて脳科学者の池谷裕二さんの「脳には妙なクセがある」によると、「側頭葉」を磁気刺激すると40%ほどの人が「存在しないはずのモノをありありと感じた」ということ。この時に見えたものは人によってキリストだったり、マリアだったり、ムハンマドだったりするらしい。ちなみに、世の中には、この「側頭葉」に異常を持った人たちがいる。それが、「てんかん患者」である。てんかん患者は、脳に磁気刺激を受けなくても、神の存在を感じる人たちであると昔から知られており、てんかんの発作後に「神が見えた」「お告げが聞こえた」というらしい。てんかんの発作を昔の人が見れば、神か悪霊に取りつかれたかのように見えただろうと想像できる。
また、実験によると、脳右側の頭頂葉の「角回」と呼ばれる場所を刺激すると、幽体離脱を経験できるという。しかもこれはほぼ毎回再現できるとのことで、幽体離脱と「角回」が関係していることは間違いないと考えらえている。つまり、幽体離脱はオカルトではなく、脳への刺激によっておこる反射と言える。
だから、個人的には著者と同じように、「オカルト」は信じていないが、ある人が感じた、見えた、聞こえたという心霊体験はその本人にとっては嘘ではないのだと考えている(いわゆる、脳への刺激によって起こる幻視、幻聴であると考えられる)
また、映画や小説などでもよく使われる「夢のお告げ」については著者は以下のように述べている。

深層心理学によれば、抑圧された無意識の気持ちが夢に現れることがよくあると言います。亡くなった人物の言葉を借りて、その無意識が夢に出てくるのは、素直な現れ方です。無意識の気持ちが、意識でいま思っている「自分の気持ち」とかなり異なるものならば、尊敬する人の言葉として語られれば受け入れやすい。ましてや死者の言葉であれば、もうその本人に真意を確かめることはできず、疑いをはさむ余地も少ない。「無意識が死者の形を借りて、意識に訴えている」と解釈できるわけです。ときどき、夢枕に立った霊が与えてくれたアドバイスに従ったところうまく成功したとか、危険を回避できたといった報告がなされます。いわゆる「夢のお告げ」ですが、深層心理学の視点に立てば、優秀な無意識が、おのれの考えが自覚する意識になかなか理解されない現状に業を煮やし、手の込んだ物語でもって意識を説得したという解釈も可能です。

非常に納得感がある解釈だと思う。
著者は、超常現象が社会に役に立つ可能性が一番高いのが「創造性」だと言っている。「無意識」には創造性が宿っているので、その成果を受け取れるようになれば、個人に、社会に大きな利益があるという。無意識の働きが、幽霊や仙人や宇宙人やキリストや死者といった人格をもった形で現れるのは、そのほうが自分の意識にとってわかりやすいからであり、なんらかの他者と対話するという形式のほうが素直に無意識の主張を受け入れやすいためと考えられる。
作家の石田衣良さんがテレビの取材に答えた創作の極意が、この「無意識」と「意識」のコミュニケーションをうまく表現していると感じた。

無意識の部分というのは、僕の意識の中にはないので、誰か他人のような感じなんですよ。なので、さんざん考えたあと、ある程度煮つまったら、「彼」のほうへぽんと投げてしまうんですね。そうしたらもう「彼」のほうが勝手に考えてくれるので、あるストーリーを、ある日ぽんと投げ返してくれるのですよ。(NHK「ドキュメント”考える”」)

陰で働く「無意識」を活用して、創造性という果実を、うまく刈り取っている例だと思った。
著者は、今後、このような「無意識の科学」の研究が進むだろうと予測し、それによって社会が発展することを示唆している。
良書!!
「無意識」や「潜在意識」に関する本を読みたいと感じた!

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