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晩春
北鎌倉に住む大学教授(笠智衆)が、婚期を逃しかけているひとり娘(原節子)を、寂しさをこらえて嫁に出すまでの物語。上品なおじさんならNo.1の笠智衆と小津作品にはかかせない原節子のコンビ、そこに杉村春子がスパイスを加えている。名画中の名画。
レビュー・感想・解説・ネタバレ
完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。
「監督 小津安二郎 いつもと変わらぬ103回目の夏」で小津特集をやっていたので、そこで「晩春」を観て来た。
上品でモダンである。女性の立ち居振る舞い、言葉遣いの美しさに衝撃を受けた。今聞くとこっけいさすら漂うほどに。様々な場面で清潔感が漂う映画であり、小津の美意識が投影されているのだろうと思う。
「娘はつまらんなあ。せっかく育てたのにあげなければならない。」
「我々も育ったものをもらった。」
「そうだなあ。」
そこからは育てたものを自分以外の誰かにあげるという人間社会古来からの伝統を垣間見る。自分が育てたものを自分のために置いておくことを許さないというルール。ドリブルではなくパス。自分がほしいものは他人にあげることでしか得ることができない。
質のいい映画を観たという満腹感を味わった。