★★★☆☆[映画] ピアニスト – The Piano Teacher (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 4 分

ピアニスト [DVD]
KADOKAWA / 角川書店

ピアノ教師と生徒の愛憎を描いたドラマ。ピアノ教授・エリカは、母親の極度の干渉を受けながら暮らし、倒錯的性癖を隠し持っていた。そんなある日、ひとりの青年と出会い好意を寄せられるが…。一流のピアニストになるため、ピアノ以外のことを束縛されて育ってきた中年女性と、その彼女を愛してしまった年下の男性の苦悩に満ちた切ない恋を描いた作品。

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レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

ミヒャエル・ハネケ監督作品である。同監督の作品は、「ファニーゲーム」を以前観たが、強烈な印象が残っている。そして、本作もまた、強烈な印象を残してしまうことになる。

現代社会の病理でもある親子の過干渉によって、主人公が、葛藤し、屈折し、爆発する様を見ることができる。

厳しい母親のもと、ピアニストとして自分を押さえつけ、欲望を我慢してきた主人公・エリカ。精神を病んだ父親は家におらず、大人になった現在もすべてのことに干渉してくる母親との2人暮らしをずっと続けている。冒頭の親子喧嘩は不気味である。

制限を受けて、できないことが増えると、二次的に2つの困ったことが起きる。1つは、できないことを補おうとして、本来は行われないはずの「代理行為」が起きる。もう1つは、できることが制限されると、できないからやらない、やらないからできない、という負のスパイラルに陥る。

母親の厳しい監視によって、中年になっても恋愛や性行為を行ってこなかったエリカは、「代理行為」として異常な性癖を持つようになる。この「代理行為」が生々しい… 自分の性器を傷つけたり、他人のカーセックスを覗き見しながらの放尿、男性ばかりの個室ビデオ屋でHなビデオを見ながら、使用済みティッシュを嗅ぐことなどによって、屈折した性的な欲求を慰めていた。なかなか強烈である。

そんなエリカに、転機が訪れる。若いイケメン学生・ワルターからの求愛である。ワルターは、エリカの異常性癖のことなど何一つ知らないまま、ぐいぐい押しの一手で攻めてくる。恋愛をしてこなかったエリカは、わざと制限をもうけるかのように、連絡は電話か手紙にすることを要求したり、性行為の代わりに手や口を使ったりなど、ここでも出てくるのは、「代理行為」である。

「代理行為」に我慢ができないワルターは、エリカの家へ乗り込んでくる。そこでもエリカは、長い間に積もり積もった欲望を手紙という形でワルターへ要求する。この手紙の内容もこれまた強烈である。さすがのワルターも引く。そりゃあ男からしたら引くよね。
男が逃げたら、追いかけるのが女。ホッケー場までワルターを追っていくが、妄想と現実のギャップに体がついていかない…

そして、突然、ワルターがエリカの自宅にやってきたことで、エリカの妄想(理想)が現実となるも、あまりのギャップに止めてくれと言うばかり。悲劇の処女喪失となる。そして、最後のシーンは、今まで自分を押さえつけてきたピアノや母親、ワルターとの決別のシーンである。

我々は、エリカを痛いなあ、醜いなあ、狂ってるなあと思うことはできるが、監督は、そんなエリカに象徴される現代社会の病理は、身近にたくさんあり、我々自身もそうなる可能性があると訴えているように思った。エリカの「代理行為」と同じように、形を変えた疑似的な行為に我々は夢中になっており、それに逃げ込んでいる人も多いと警告しているようだ。そして、人間の感情というものが、いかに扱いずらく、屈折しやすく、爆発しやすく、おかしくなりやすいか。それでも、人は生きなければ…そんなラストシーンだったと思う。
強烈な作品。

だが、とても人には薦められない。。。

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