破船 – 吉村昭 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取る――僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習“お船様”が招いた、悪夢のような災厄を描く、異色の長編小説。

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書評・レビュー・感想

太平洋に浮かぶ無人島・鳥島で12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還を果たした野村長平(無人島長平)を描いたノンフィクション「漂流」を読み、著者の吉村昭さんに興味を持った。そして吉村昭さんの別の本を読んで見たいと思い、手に取ったのが本書である。
本書は、「漂流」とは違い、一応フィクションではあるが、吉村昭さんらしく、しっかりとした調査を元に作られた小説なので、モデルとなる村はあるらしい。

本書は、場所は佐渡島、時代は江戸時代となっている。
モデルの村は諸説あるが、佐渡島の小木半島の北西側のあたりらしい。

たった17戸の漁村が生き残るために行っていたことが描かれている。破船というタイトルから、漂流のように難破した船乗りたちの物語かと予想して読み始めたが、逆だった。難破した船がよく漂着するという村の話であった。
この漁村は、穀物などがあまり育たないところであるため、漁業中心の食べるだけで精一杯という場所であり、漁獲量によっては娘を売ったり、家の主人が出稼ぎに行ったりすることも多い。そんな貧しい漁村に住む9歳の男の子・伊作を通して、この村の昔からの風習「お船様」にまつわる物語が展開していく。
史実ではないが、こんな村があってもおかしくないし、実際、たった百数十年ほど前の日本の話だと考えると現代日本は本当に恵まれていると思う。
難破して村に打ち上げられた船を「お船様」と呼び、船に詰まれた荷物を奪い取るということを村単位で長年にわたって実施し、それを近隣の村に秘匿し続けている。
しかもただ単純に難破した船を待つのではなく、船が難破しやすいように、闇夜に「塩焼き」の火を焚き、破船を促すという積極的な行為を村が組織立って行っていた。
そんな「お船様」が村にもたらしたモノによって物語を大きく転換する。ここからは本書を読んでいただきたいが、僻地の貧村に伝わる生き残りのための過酷な風習が招いた悲劇が本書のテーマである。
生きる、生き残るというのは大変なことだ!
2012年11月に佐渡島に漂着した船から5人の遺体が見つかったという報道魚拓)があったが、漂着した船は、北朝鮮から流れてきたものらしく、船にはエンジンがついておらず、遺体の一部が白骨化していたことなども考えると、もともと死体だったものを意図して船に積み込み、漂流させたという可能性も十分ある。その後の調べによると、5人は鳥インフルエンザにかかっていたとみられ、北朝鮮が謎の伝染病を村から追い出そうと、死者と罹患者を船で流した可能性がある。
 ・ 死因は鳥インフル? 北から漂着5遺体の「謎」 (1)- 【高木桂一の『ここだけ』の話】 | 産経新聞(魚拓
 ・ 死因は鳥インフル? 北から漂着5遺体の「謎」 (2)- 【高木桂一の『ここだけ』の話】 | 産経新聞(魚拓
現代でもこのようなことがあるのである。江戸時代に朝鮮から同様なことがあってもおかしくなく、本書がよくリアルに感じられる。
ちなみに、新潟の第9管区海上保安本部によると、2007年~2012年の間に、新潟県付近の海で発見された朝鮮半島から来たとみられる船は55隻で、いずれも木造船とのこと。
一読をお勧めしたい本である。

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