★★★★☆[映画] 日の名残り – The Remains of the Day (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 4 分

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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

1958年。ダーリントン邸の老執事スティーブンスのもとに、以前共に屋敷で働いていた女性ミス・ケントンから一通の手紙が届く。懐かしさに駆られる彼の胸に20年前の思い出が蘇るーー。当時、主人に対して常に忠実なスティーブンスと勝ち気なケントンは仕事上の対立を繰り返していた。二人には互いへの思慕の情が少しずつ芽生えていたが、仕事を最優先するスティーブンスがそれに気づくはずもなかった。
そんな中、ケントンに結婚話が持ち上がる。それを知ったスティーブンスは激しく動揺するが…。

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レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

失われたものを取り戻すことができない男の哀しみと後悔の物語である。

本作品では、主人公である執事スティーブンスの回想を通じて、主人・ダーリントン卿とスティーブンス自身の失敗を並行して追っていくことになる。



スティーブンスが執事として仕えるダーリントン卿は、英国貴族としての使命と善意を信じ、名誉のために国際政治に大きく関わっていく。スティーブンスは、そんな主人を信じ、徹底的なプロフェッショナルとして尽くしていく。
しかし、ダーリントン卿の善意はナチス・ドイツに利用され、不名誉なレッテルを張られたまま不遇の死を迎える。そして、スティーブンスも生涯を通じて尽くしたもの、信じたものが崩壊していく。



そのような状況で、ダーリントン卿の死後、ダーリントン・ホールを買い取り、スティーブンスの新しい主人となったのが、ダーリントン卿をアマチュアだと非難し、政治はプロに任せるべきだと発言していたアメリカのルイス下院議員だった。

その新しい主人から休暇をすすめられ、手紙をもらっていた元・同僚のケントンのところへ車で向かう。向かっている車中で回想されるのは、ケントンと一緒に働いていた時代のことであり、それは、これまでの人生をふりかえるほろ苦い旅でもあった。

この旅行における時間軸とスティーヴンスの人生の時間軸がうまく同期するようになっており、旅行の前半では、若いころのスティーヴンス、旅行の後半では現在のスティーヴンスといった物語の流れとなっている。本作品のタイトルでもある「日の名残り」は、黄昏時を意味し、イギリスという国の黄昏時、ダーリントン卿がいたダーリントン・ホールの黄昏時、スティーヴンスの人生の黄昏時を暗示していると思われる。



スティーヴンスは、親子2代での執事であり、また完璧な執事を目指し、ストイックに職務を果たしてきた。それが彼の性格や人間形成に与えた影響は大きく、間接的に好意を表すケントンに対しても事務的な対応に終始してしまう。長年の執事生活でかろうじて知っていたのは、プライベートな時間に読んだ本の世界のことだけ。ケントンの愛に応える勇気がなかったのか、愛し方を知らなかったのか。。。

一向に自分の愛に気付かない(気付かない振りをする)スティーヴンスへの当て付けとして、ケントンはある人から求愛されたことを明かす。それでもスティーヴンスは儀礼的な祝福を述べるだけ。その後、別室で泣いていた彼女への対応から、彼には愛に応える勇気と愛し方の両方が足りなかったのではないかと感じた。



ケントンのところへ車へ向かう旅行は、外の世界へ飛び立つ術を知らず、かごの中から出るのを恐れていた過去の後悔を正すための旅でもあったが、過ぎ去った過去は元には戻らないことを知る旅となる。

ラストは、部屋に迷い込んだ鳩を新しい主人であるルイス下院議員と2人で窓から逃がすシーンがあるが、鳩が外の世界に羽ばたいていくのとは対照的に、今までと同じ狭い世界の中に閉じこもるしかないスティーヴンスは何を思ったのだろうか。

失われたものを取り戻すことはできず、元の日々に戻るラストは、しっとりとほろ苦くも、味わいのある映画を象徴していいたように思う。

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