人間の集団について − ベトナムから考える 前編 – 司馬 遼太郎 (書評・レビュー・感想)

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人間の集団について―ベトナムから考える人間の集団について―ベトナムから考える

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書評・レビュー・感想

ベトナムを知るための読書の第三弾。
大御所の本を選ぶ。


ベトナムの1960年代〜1970年代の歴史をざっくり書くと以下のようなものである。
1964年 に、「トンキン湾事件」が起こり、米軍が介入。
1973年1月27日に、パリ協定 (ベトナム和平)が結ばれる。
1973年1月29日に、ニクソン大統領がベトナム戦争の終戦を宣言。
1973年3月29日に、アメリカ軍は南ベトナムから撤退完了。
1975年3月10日に、北ベトナムが南ベトナムの総攻撃開始。
1975年4月30日に、サイゴンが陥落し、南ベトナム政府は無条件降伏。
1976年7月に、南北は統一し、ベトナム社会主義共和国が成立。
著者の司馬遼太郎氏が、本書を書くために、ベトナムのサイゴン(現在のホーチミン)に入ったのは、米軍の最後の部隊が撤退した三日後の1973年4月1日だったようだ。
当時は、まだ北ベトナムと南ベトナムが分かれており、米軍が南ベトナム軍に相当の軍備(世界第四位レベル)を残している状況だったみたいで、著者はそのサイゴンについてこう書いている。

サイゴンの繁栄はアメリカの援助による仇花であり、多くの都市生活者の暮らしはその落穂をひろうことで成立している。しかし労働力が商品といっても、職場はまだ多くはなく、ひとびとが町中を爆音でつつんで駈け回らねばならぬほどに多忙ではないはずである。

当時すでに死去していた北ベトナムの指導者であったホー・チ・ミンについては以下のように記している。

ベトナムにあっては、ホー・チ・ミンが、アジア史上まれにみるほどにアジア人の感覚にあった政治家であったように思われる。「ホーおじさん」といわれたこの人は、いまでも、南ベトナム人の人間でさえ、圧倒的に好かれている。南ベトナムの場合は声を大きくしてはいえないが、「誰がいい政治家か」ときいた私の質問に、たいていのひとが、「ホー・チ・ミン」と、ささやいた。理由は、清貧で威張らなかった、と誰もがいった。

レーニン、トロツキー、スターリン、毛沢東、カストロ、金日成、金正日など、共産主義の指導者で革命後に、粛清などを行い独裁者への道を歩む人が多い中では、ホー・チ・ミンの特異さが際立つ。
そんな激動期のベトナムで、著者は、ベトナムという国、ベトナム人という集団、世界政略の中のベトナム、日本・中国・朝鮮と比較したベトナム、ベトナム人にとっての近代国家や理想の首領などのテーマをうまく使いながら、人間というものにアプローチする。
人間の集団・民族にとっての正義やイデオロギーというものを考える上で良書だと思う。

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