★★★☆☆[映画] タイム – TIME (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 6 分

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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

科学の進化により老化を克服した近未来、そこでは”時間”が”通貨”となり世界を支配していた。人間の成長は25歳で止まり、余命(時間)は労働により稼がなければならなかった。そして街は”タイムゾーン”という境界線により、貧困層が住む〈スラム・ゾーン〉と〈富裕ゾーン〉に明確に分けられ、その行き来は禁止されていた。ある日、ある男から100年の時間をもらったことで殺人容疑をかけられた貧困層の青年ウィルは、スラムゾーンに別れを告げ、富裕ゾーンに逃げ込む。そこで彼は、贅沢な生活に永遠の命を無駄に費やす人々の中にいた大富豪の娘シルビアと出会い恋に落ちるのだが、間もなく時間監視局員レオンに追い詰められてしまう。窮地のウィルはシルビアを人質に取り、自由を求めて逃避行を続けるのだが、二人の余命は残りわずかとなっていた……。

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レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

原題は「In Time」、この in が重要。 on time は「定刻通りに」という意味だが、 in time は「間に合った」という意味である。つまり、タイトルから、「何かに間に合った」という作品であることがわかる。何に間に合ったのだろうか。

<時間>=お金という現代米国社会を風刺した近未来SF作品である。近未来ロビン・フッド、近未来ボニー&クライドともいうべき内容となっている。

作品の構成は、ギリシャ神話、旧約聖書、中世イングランド伝説、米国建国物語などをちりばめたものとなっている。このあたりは登場人物の名前からある程度、類推できるようにしてあるようだ。

ヒロインは、富豪の娘のシルビアであるが、シルビアとはギリシャ神話に出てくる狩りの女神(美しい妖精)であるが、ギリシャ神話の通り、純朴な羊飼いのアミンタ(本作ではウィルに相当)と恋仲になり、様々な障害を乗り越えるというストリーラインは本作でも踏襲されている。

主人公ウィルの母親はレイチェルであるが、レイチェルといえば、旧約聖書に出てくるヤコブ(イスラエル)の妻・ラケルであり、この名前が暗示する役割は、母になるために苦労したり、子を産んだために命をなくすといったことから、本作品の中でレイチェルが死ぬことは名前からある程度予想できた。

映画の途中でレイチェルが死んだことで、レイチェル(ラケル)とヤコブ(イスラエル)の息子であるヨセフの役割が主人公ウィルに与えられていることはだいたい想像がついた。つまり、一度コミュニティから離れるが、受難を経て、家族に栄光をもたらす役割である。(ヨセフのエジプトにおける受難と栄光のストーリーラインである)

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そのウィルがコミュニティから離れるきっかけをつくるのが、人生に虚無感を覚え、死を求めていた大金持ち<大時間持ち>のハミルトンである。このハミルトンの名前は、アレクサンダー・ハミルトンに由来しているのは間違いない。なぜなら、、アレクサンダー・ハミルトンと言えば、アメリカの建国の父の一人であり、米国財務省証券を考え出した人であり、10ドル札の絵柄にもなっている、まさに「お金」を象徴する人物だからである。

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そんなハミルトンに、この時代では<時間>=お金となっているため、大時間持ちの役割を与えていることは想像に難くない。そんなハミルトンから100年以上の時間をもらったウィルには、ハミルトンの分身としての役割も与えらえているとも考えられる。なぜなら、アレクサンダー・ハミルトンは、私生児として社会の最下層から身を起こし、建国の父の1人にまでなった人であり、本作のウィルは日雇い労働者としてスラムに暮しながら、上流階級の世界に入って行く構成になっているからである。

ハミルトンから100年以上の時間をもらったウィルであるが、それによってハミルトン殺しの罪で警察から追われることになる。そのウィルを追う警察官(タイムキーパー)の名前がレオンである。レオンとは、ラテン語でライオンを意味し、ライオンのような強さでウィルを追うことが暗示されている。作中では直接言及されないが、ウィルの父親とレオンは、かなり昔、スラムにおいて<時間>の賭け事をしていた顔見知りではないかと思う。ウィルの父親は賭け事に勝ったために殺され、レオンは賭け事に勝ってスラムから脱出した。

ギリシャ神話において、シルビアを拉致して連れまわすのは悪人のオリオンであるが、本作では主人公ウィルの役割となっている。しかしそんなウィルに「危険な香り」を感じて一目惚れし、以後行動を共にする流れは、まさにボニー&クライドであり、その後の銀行強盗などからも、ギリシャ神話とボニー&クライドをミックスしたような脚本となっている。銀行強盗のくだりなどは、「俺たちに明日はない – Bonnie and Clyde」などとよく似ている。

銀行強盗をして奪った<時間>をスラムに住む人たちに分け与えるくだりは、中世イングランドの伝説的な義賊であるロビン・フッドのようであり、ロビン・フッドが弓の名手であったと言われているので、ギリシャ神話の狩りの女神(妖精)であるシルビアがウィルをサポートしてうまくロビン・フッド的な困っている人へお金<時間>を配る役割をすることが伺える。

この作品は、貧富の差によって金持ちとそうでない人がゲートによって違う地区で暮らす世の中やバブルがはじけて社会が混乱する様子などを貨幣と時間を変えて表現した風刺作品である。映画の中ででてくる以下のようなセリフの「時間」と「お金」を入れ替えれば、まさに今のアメリカのことを示していると言える。

・寿命を延ばすためには<時間>を稼ぐしかない。
・我々の時間は盗まれているんだ。
・誰かが時間を奪ってる!
・奴の罪は時間を奪ってことじゃない。真実を知ったことだ!

そんなウィルとシルビアの結末であるが、より大きな銀行へ強盗しようとするところでエンドロールを迎える。ボニー&クライドのような最後を迎えるのか?それともギリシャ神話のように神意のもとで結ばれるのか?はたまたヨセフのように新しい時代を切り開くことになるのか?

どれかわからないが、どの結末にしろ、近未来の神話(ずっと未来からすると現代のギリシャ神話や旧約聖書のような位置付け)となるような物語になっているのではないだろうか。また、心理学的な見方をすれば、スラム出身で賭け事に強かったグッドファーザー(ウィルの父親)とバッドファーザー(レオン)がいて、バッドファーザーであるレオンを殺すことで父親殺しをして成長を遂げ、恋人と幸せになるというエディプス・コンプレックスの解消という要素もあると思われる。

TIME/タイム (字幕版)

そんな「TIME – タイム」の予告編は以下で見ることができる!

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