★★★★★[映画] 羊たちの沈黙 – The Silence of the Lambs (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 5 分

羊たちの沈黙(特別編) [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

女性を誘拐し、皮を剥いで殺害する連続殺人事件の捜査を任命されたFBI訓練生のクラリス。彼女に与えられた任務は9人の患者を惨殺して食べた獄中の天才精神科医レクター博士に協力を求め、心理的な面から犯人に迫ることだった。レクター博士は捜査に協力する代償に、彼女自身の過去を語らせる。息詰まる心理戦の果てに導き出された答えとは──?

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レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

若く美しいFBI訓練生のクラリス(ジョディ・フォスター)が、連続殺人犯として拘留中の精神分析医・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)から情報を得て、バッファロー・ビルと呼ばれる連続殺人鬼を追い詰めていく物語であるが、レクター博士から見れば、クラリスという興味深い患者の分析と治療行為の物語とも言える。



レクター博士は、FBIの行動分析課主任である捜査官・クロフォードから自分が監禁されている精神異常犯罪者の監禁病棟へ派遣されたクラリスに興味を持ち、自分から情報を引き出そうとする彼女を挑発しながら、元精神分析医としてクラリスがFBIでの成功(出世)という欲望と生い立ちにトラウマを持つことを見抜く。ここからレクター博士によるクラリスの分析・治療行為が始まることになる。

そして、レクター博士は、クラリスの秘められた過去(少女時代の記憶)の話と引き換えにクラリスが求める事件解決のヒントを与えていくことになる。



クラリスによるバッファロー・ビル事件の捜査とレクター博士によるクラリスの精神分析というメインストーリーの裏でレクター博士による監禁病棟所長のドクター・チルトンへの復讐がサブストーリーとして展開していく。

レクター博士は、バッファロー・ビルが殺人に駆り立てられる理由の本質を「極度の切望」であると分析し、それは「近くにあって、毎日見ることから始まる」というヒントをクラリスに与える。また、犯人は性倒錯者ではなく、幼児期の虐待によって自分自身を嫌って変身を望んでいるという心理分析をする。その犯人の「変身願望」のメタファーが「蛾」である。



そのような事件解決へのヒントの引き換えとして、レクター博士は、クラリスの過去の話(強盗に殺された警察署長だった父親や預けられた親戚の家で助けられなかった子羊の話)を引き出し、少女時代のトラウマとして今でも「子羊の悲鳴」が夢に出てくることを知る。



本作品のタイトルは「羊たちの沈黙」であるが、これはクラリスの悪夢である「子羊の悲鳴」の対義語となっていることがわかる。また羊とは、事件の被害者やキリスト教における生け贄といった意味もあり、タイトルにある「羊たち」とは親戚の家で助けられなかった子羊だけでなく、強盗の凶弾に倒れた父親やバッファロー・ビルによって殺された被害者たちも含まれていると考えられる。



レクター博士のヒントによりクラリスが犯人を追いつめ、対峙するハラハラ、ドキドキの場面がクライマックスかと思いきや、本当のクライマックスはその後にやってくる。。。



バッファロー・ビル事件を解決したクラリスは、FBIでの成功の手がかりを得るが、その祝勝会に突然「子羊の悲鳴は止んだかな」と監禁から逃げ出したレクター博士から電話がかかってくる。その問いに沈黙するクラリス。それによって本作品のタイトルにある「羊たち」は、親戚の家で助けられなかった子羊や父親、バッファロー・ビルの被害者たちだけでなく、「クラリス」をも含まれていることが鮮やかに表現されている。(この場面が本当のクライマックスだと思う。)



DVDのジャケット写真はクラリスの口の前に蛾がとまっている画像であるが、バッファロー・ビル事件のメタファーである「蛾」によってクラリスが「沈黙」させられるという作品の結末を予感させるものになっており、「クラリス=羊」であることはこんなところにも暗示されていたのか!と後から気づいた。

「クラリス=羊」であることの伏線は、様々な場面においてクラリスの非力さ、弱さとして表現されている。そしてそんなクラリスが事件の解決を成し遂げるが、精神分析医としてクラリスを患者と見ていたレクター博士の最後の問いに沈黙することにより、自分のトラウマを乗り越えることはできていないことが突きつけられる。連続殺人犯の事件解決という歓喜と賞賛の影で少女時代のトラウマという内面は解決されておらずそのギャップがこの作品をより深みのあるものにしている。



サブストーリーとして展開していたレクター博士によるドクター・チルトンへの復讐は、ドクター・チルトンとクラリスがバッファロー・ビル事件においてライバル関係にあることを利用し、ドクター・チルトンに嘘の犯人情報を伝え、恥をかかせるだけにとどまらず、最後の場面にて、もっとえげつないことが起きたことを暗示してエンドロールとなる。

レクター博士の最後のセリフは、 “I’m having my old friend for dinner.”であり、翻訳では「古い友人を夕食に招いている」となっているが、「人食い(ハンニバル)」であるレクター博士のセリフと考えれば、「古い友人を夕食として食べる」という意味も含まれていることがわかり、ゾッとした。

口当たりも良く、ボディもしっかりしていながら余韻もある、そんな極上ワインのような完熟した作品である。

さすが名作!

間違いなし!



余談だが、DVDのジャケット写真はクラリスの口の前に蛾がとまっている画像は、実はサルバドール・ダリが撮った7人の裸の女性である。

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