幕末入門 – 中村 彰彦(書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 4 分

尊王・佐幕、攘夷・開国、攻守所を変え、二転三転する複雑怪奇な動乱の時代。混迷をきわめた幕末の政情をわかりやすく読み解いた恰好の入門書。間口は広く敷居は低く、しかし、幕末諸藩、新選組さらに孝明天皇毒殺説まで、奥深い歴史の醍醐味が堪能できる一冊。

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書評・レビュー・感想

幕末についての知識を網羅的におさえるために各藩や部隊ごとに1章を割いて説明をしている。会津藩、新撰組、長州藩、薩摩藩、土佐藩についてである。
それ以外には、幕末の4つの謎として、姉小路公知は誰に討たれたか?、孝明天皇毒殺説は事実か?、坂本龍馬暗殺の黒幕は誰か?、討幕の密勅は偽文書か?について考察している。こちらは非常に面白かった。
特に討幕の密勅は偽文書か?については、今まで疑問に思っていた勅旨の作られ方について述べられていたのでぐっと引き込まれた。
討幕の密勅と呼ばれているものは、詔書であり、詔書は天皇の出す文書のうちもっとも重いものであるが、これを作成する手続きは以下のようであり、非常に面倒である。
Wikipedia – 詔

律令制においては、公式令(くしきりょう)に詔書の書式が定められていた。重要事項の宣告に用いられ、天皇は署名せず、草案に日付を書き(御画日)、成案に可の字を書いた(御画可)。また、公卿全員の署名を必要とした。詔書は天皇と公卿全員の意見の一致が必要であり、手続きが煩雑なため、即位、改元など儀式的な事項にのみ用いられるようになった。
詔書はまず中務省の内記が草案を作成し、天皇が一旦それに日付を加える(畫日)次に中務省の責任者3名(卿・大輔・少輔)が内記の記した官位姓の下に自署を行い、それぞれの下に「宣」「奉」「行」の一字を記す。これを「案文」と称する。
次に案文の複製を成案の草案として作成して再度中務省の責任者の署名を加えて天皇の御璽を押印した後に太政官に送付し、今度は外記が大臣・大納言の官位姓を記して日付を加え、天皇への奏請の一文とともに太政官の会議にかけられて太政大臣以下の大臣・大納言の自署を加えた後に大納言が天皇にこれを覆奏する。
天皇は年月日の横に成案の草案に可の字を書いた(畫可)。ここで成案の草案は正式な詔書となるが、更にこれの複製を作成するとともに弁官によって詔書の実施を命じる太政官符が作成される。
ここで詔書の内容が宣命として口頭で伝達される(誥)とともに太政官符が交付されて詔書が発効するのである。

では、実際の討幕の密勅はどのようなものであったかというと・・・・
畫日がなく、中務省の責任者3名(卿・大輔・少輔)の署名もなく、太政大臣以下の大臣・大納言の署名もなく、天皇による畫可もなく、天皇の御璽も押印されていない。つまり、ほとんど詔書の形式になっていない。
詔書ではなく、綸旨である可能性もあるが、綸旨であれば、天皇は第三人称で書かれるはずであるが、討幕の密勅は第一人称(朕)で書かれている。
Wikipedia – 綸旨

太政官の正式な手続が必要な詔書・勅書や、発給されるまでに蔵人・上卿・弁官など複数の役人の間で伝言がなされた宣旨に対し、綸旨は手続きが一層簡略化され、蔵人が「綸言は以下の通り」(書出し部分ならば「蒙綸旨云/被綸言云」・書止め部分ならば「綸言如此/天気如此」という文言)と書いて自分の名義で発行するという形式を取った。
本来は公式の詔勅に対し私的なものであったが、内容が政治・軍事などに関するものが多く、公文書の性質を帯びる。ただし、重大な法令などは依然として詔書・勅書として出される場合が多く、綸旨が発給されたのは、特定の相手のみを対象とした命令や臨時の命令などが主であった。

つまり、文書の形式で判断すれば、天皇の意思を騙った偽の文書であると言える。このような偽の文書を元にして討幕が行われたことを多くの人は知った方がいいと思った。
非常にすばらしい本だと思う。
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