脳には妙なクセがある – 池谷 裕二 (書評・レビュー・感想)

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書評・レビュー・感想

あまりにも人間的な脳の本性。最新の知見をたっぷり解説。
脳科学者である著者の池谷裕二さんには名著「のうだま」と「のうだま2」があるが、本書は、脳の実践的活用方法というよりは、脳科学のQ&Aみたいな感じである。
「のうだま」で個人的にもとても大きな知見となった「やる気があるからやるのではなく、やるからやる気が出る!」という脳科学における事実が一般的に信じられている因果関係と逆であるという内容についても、本書では、「笑顔をつくるからうれしいという逆因果」という項目で述べられている。
また、「のうだま2」における「記憶の定着には「入力」と「出力」のどちらが大切か?」という問題についても本書では「のうだま2」より詳しく書かれてあったので興味がある人は読んでみると良い。
「のうだま」や「のうだま2」のように明日からできる実践的方法はあまりないが、その2冊には載っていなかったが、おっ!と思った内容があったので紹介したい。

●人差し指の長さでわかることがある!

あなたは、人差し指と薬指はどちらが長いだろうか?
この2本の比率は人によって違うことが知られており、その原因は、胎生期に浴びた男性ホルモン(テストステロン)の量であるらしい。そしてこのテストステロンは脳の発達に影響を与えることがわかっているとのこと。薬指よりも人差し指が短ければ短いほど、テストステロンを胎生期に多く浴びている。
薬指よりも人差し指がより短い人は、自信に満ちたタイプになり、危険を好み、ねばり強く調査し、注意深くなり、反応や動作が早くなる傾向があるとのこと。そのため、このタイプが投資家に向いているという研究結果もある。またテストステロンは男性ホルモンの一種であるため、一般的には男性の方が女性より人差し指が短いが、女性の中にも男性のように人差し指が短い人もいて、その女性は同性愛の傾向が強いらしい。
手相は信じていないが、こういうことは信じるタイプなので、なるほどなあと思った。人の傾向を目利きする参考になるかもしれない。

●人は左側を重要視している!

人には視野の半分を重要視して、もう一方を無視しがちな認知傾向があり、それは「シュードネグレクト」と呼ばれているとのこと。これは、地域や民族、時代を超えた認知傾向であるらしい。
そしてどちらを重要視するかといえば、「左側」である。特に右利きの人にこの傾向が強いとのこと。左重視の傾向はいたるところにあらわており、魚の頭は左側に書かれているし、八百屋でも左側の棚に目玉商品を陳列した方がよく売れるという実験結果もあるらしい。
これは明日からでも使えるTIPSと言えるだろう。

●腹八分目で寿命と記憶力がUPする!

もう長年に渡ってダイエットがブームとなっているため、カロリー摂取を控えて健康に気を遣うことを実践している人は多いと思うが、多くは体重コントロールのためかと思う。しかし、これには寿命と記憶力を向上させる効果もあるらしい。
「カロリー摂取を控えて健康に気を遣うこと」は、カロリー・リストリクション、通称「カロリス」と呼ばれているが、カロリスの効果は小さな虫から哺乳類に至るまで生物界にはほぼ普遍的に観察されるらしく、食事量を20~30%ほど制限すれば大きな長寿効果があるとのこと。昔から「腹八分目」と言われるが、長寿にも効果があるとは知らなかった。
また、ある実験ではカロリスを行ったグループとそうでないグループでテストをしたところ、3か月のカロリスで30%ほど成績上昇の効果が見られたとのこと。「腹八分目」は記憶力の向上にも効果があったとは驚きである。
このカロリスも明日からできるTIPSと言えるかもしれない。

●脳には「神」を感じる回路がある!

知らなかったが、脳のある部分に磁気刺激を行うことで「神」を感じることができるらしい。その場所とは、こめかみよりも少し後部の脳で言えば、「側頭葉」に当たる部分とのこと。ここを磁気刺激する実験を起こったら、40%ほどの人が「存在しないはずのモノをありありと感じた」とのこと。この時に見えたものは人によってキリストだったり、マリアだったり、ムハンマドだったりするらしい。
そして、世の中には、この「側頭葉」に異常を持った人たちがいる。「てんかん患者」である。
てんかん患者は、脳に磁気刺激を受けなくても、神の存在を感じる人たちであると昔から知られており、てんかんの発作後に「神が見えた」「お告げが聞こえた」というらしい。てんかんの発作を昔の人が見れば、神か悪霊に取りつかれたかのように見えただろうと想像できる。そんな「てんかん患者」が「神」や「お告げ」の話をするのである。古代においては、そんな「てんかん患者」が霊能者や預言者などと呼ばれていた可能性も考えられる。
ムハンマドや使徒パウロがてんかん患者であったことは良く知られているが、卑弥呼やイエス、新興宗教の教祖などもそうだったかもしれない。

●だれでも幽体離脱できる!

実験によると、脳右側の頭頂葉の「角回」と呼ばれる場所を刺激すると、幽体離脱を経験できるという。しかもこれはほぼ毎回再現できるとのことで、幽体離脱と「角回」が関係していることは間違いないと考えらえている。つまり、幽体離脱はオカルトではなく、脳への刺激によっておこる反射と言える。
また別の実験では左側の側頭-頭頂接合部を刺激すると、部屋に誰かがいる気配を感じるとのこと。実験によるとこの気配とは「自分自身」であることを確認している。これは脳への刺激によって体の位置が背後にテレポートしている感じるが、本人がそれに気づかないために起こっているとのこと。そのため「他人」の気配がするらしい。
幽体離脱の経験はないが、誰のいないのに誰かいるような気配を感じたことはある。それが「自分自身」だったとは・・・・知らなかった。これは統合失調症の強迫観念の現象と似ているらしい。
てんかん患者による霊的体験や統合失調症による強迫観念など、世間一般で神秘やオカルトとされていることの多くが脳のある部分への刺激で起こることが実験で証明されている。現代の脳科学はすごいところまで来ているなあと率直に思った。

●集中することは良いことか?

「集中力」に関する書籍やネタが世の中には多く出回って、集中できること、集中力を高めることがすばらしいことと思われている。しかし、集中とは動物にとって不自然であり、むしろ非集中力を発達させることによって動物たちは生き残ってきたため、著者は集中力が礼賛される傾向を不思議に感じているとのこと。また瞑想の実験によれば、修行の浅い僧は集中しないと瞑想状態になれないのに、ベテラン僧は集中せずに瞑想状態に入れるという結果が出ており、真のベテランは、集中などという奇妙な過程を経ずに目的を達成するという発見は、現代の「集中」というモノに対する見方が間違っているのではないかと思わされた。
本書によって、日々、疑問に感じていたことが霧が晴れたような気持ちになった。「良く生きる」ための参考書なのかもしれない。池谷裕二さんの本には本当にはずれがない。すばらしい。おススメの一冊である!!

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