物語の役割 – 小川 洋子 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 2 分

物語の役割 (ちくまプリマー新書)
小川 洋子
筑摩書房

私たちは日々受け入れられない現実を、自分の心の形に合うように転換している。誰もが作り出し、必要としている物語を、言葉で表現していくことの喜びを伝える。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

書評・レビュー・感想

芥川作家である小川洋子氏による「物語」の役割について書かれたものである。作家として「物語」を創作する立場で「物語」の役割について述べられている。
以下の文章などは自分の実感とも合致するし、多くの人にもわかりやすい「物語」の1つの役割だと思う。

たとえば、非常に受け入れがたい困難な現実にぶつかったとき、人間はほとんど無意識のうちに自分の心の形に合うようにその現実をいろいろ変形させ、どうにかしてその現実を受け入れようとする。もうそこでひとつの物語を作っているわけです。

こちらは、読者側から見た物語ではなく、作家側から見た物語(小説)について書かれており、小説とは何だろうという単純だが、回答が難しいものに対する一つの回答だろうと思われる。

非常にわかりやすい一行でかけてしまう主題を最初に意識してしまったら、それは小説にならないのです。言葉で一行で表現できてしまうならば、別に小説にする必要はない。ここが小説の背負っている難しい矛盾ですが、言葉にできないものを書いているのが小説ではないかと思うのです。一行で表現できないからこそ、人は百枚も二百枚も小説を書いてしまうのです。

著者が書くことに行き詰った時に読み返す文章があるといいいます。それが以下の文章とのこと。物語とはどういうものであるのかの一端を表していると思う。

もはや名前もわからなくなった人々を死者の世界に探しに行くこと、文学とはこれにつきるのかもしれない。

本というのは不思議なもので、本を開けば本の世界に、閉じれば現実の世界に行ったり来たりできる。これによって自分の内面と対話してきたような気もする。それが自分にとっての現実との折り合いの付け方だったのかもしれないと本書を読んで思った。現実で困難なことに出会うと本を読みたくなるのは、その困難なことを自分の中に受け入れるための物語を求めているということなのだろうと思う。
本というのは素晴らしいものだと改めて実感!

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です