オペラ座の怪人 – ガストン ルルー (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

オペラ座の怪人 (角川文庫)
ガストン ルルー
角川書店

十九世紀末、パリ。華やかなオペラ座の舞台裏では奇怪な事件が続発していた。首吊り死体、シャンデリアの落下。そして、その闇に跳梁する人影…“オペラ座の怪人”と噂されるこの妖しい男は一体何者なのか?オペラ座の歌姫クリスティーヌに恋をしたために、ラウルは、この怪異に巻き込まれる。そしてその運命の夜、歌姫とラウルは、まるで導かれるように、恐ろしい事件に飲み込まれてゆく。オペラ座の地下で、闇を支配する怪人と対峙したラウルが目にした、想像を絶する光景とは?そして怪人と歌姫の真実とは?

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書評・レビュー・感想

非常に有名な作品である。
ごく普通に読めば、単なる三角関係のもつれとも読めるが、実際は、「愛」をテーマにした、女性の成長譚であることがわかる。
ヒロインであるオペラ座の歌姫クリスティーヌは、2人の男(オペラ座の怪人とラウル子爵)の間で揺れ動く。オペラ座の怪人は、醜い顔を持ち、両親にさえ愛されない孤独な男であるが、音楽の力によってクリスティーヌに近づく、ラウル子爵はクリスティーヌの幼馴染であり、オペラ座の怪人にはない愛情、美貌、社会的地位を持つ。
オペラ座の怪人は、ラウル子爵との対比において、女性にとっての夢や仕事の象徴と考えることができる。音楽に生きるクリスティーヌは、「音楽の天使」であるオペラ座の怪人の指導により才能を開花させる。クリスティーヌがオペラ座の怪人の魅力に惹かれる様子は、まさに夢見る少女のようである。
逆にラウル子爵は、現実や恋人の象徴と考えることができる。愛に生きるラウルは、クリスティーヌに愛されることだけを願う。
オペラ座の怪人の素顔を知る以前のクリスティーヌは、夢や仕事のために一生結婚はしないと宣言するほど、「音楽の天使」であるオペラ座の怪人に魅了されており、オペラ座の怪人はそれを望む。まさにオペラ座の怪人は、ドン・ジョヴァンニのようである。
しかし、オペラ座の怪人のマスクをはぎ取り、素顔を見た後からは、オペラ座の怪人を恐れ、怖がるようになる。その時に現れるのが、ラウル子爵である。
自分から逃れようとするクリスティーヌをオペラ座の怪人は、オペラ座の地下へ誘拐する。そして魔笛(まてき)のようにラウルは、クリスティーヌの救出に向かう。
オペラ座の地下で、オペラ座の怪人は、クリスティーヌに、自分を取るか、ラウルの死を取るかという究極の選択をせまる。まさに仕事を取るか?恋人を取るか?である。そこでしたクリスティーヌの決断は・・・・・
愛に生きることの苦悩に立ち向かい、愛の力によって乗り越えるという物語である。
この作品にはキリスト教的な解釈もあるらしく、クリスティーヌとはギリシャ語でキリスト教徒を意味し、ラウルは悪魔の象徴であり、かつ羊を食い殺す狼を意味し、オペラ座の怪人は、貧困や孤独などの苦しみや悲しみを背負った人々を意味していると言われており、人狼伝説などによって差別されてきた狼や貧困や孤独で苦しむ人々の両方を愛の力によってキリスト教徒は救う使命があり、救うことができるというひとつの解釈である。
20世紀初頭のフランスでは、ハンセン病がはやっていたという時代背景もあり、オペラ座の怪人は、ハンセン病患者であり、オペラ座の地下はその隔離施設を意味しているという説もある。実際どうかはわからないが、当時の社会状況が反映されていることは間違いないかと思う。

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