★★★☆☆[映画] るにん – RUNIN banished (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 5 分

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江戸・吉原に火付けをした罪で流人となった花魁・豊菊(松坂慶子)は島役人・稲葉重三郎(根津甚八)に流人仲間の罪を密告し、飢饉の激しい流刑の地 八丈島で生きるために男たちに体を売って生き延びてきた。それもただひたすら’御赦免状’を貰い、再び江戸へ帰るため。しかし、待てど暮らせど御赦免状は届かない。稲葉が豊菊の体を弄んでいたことを知ると、豊菊は稲葉の股間を刀で斬り付けた。逆に稲葉の怒りを買った豊菊は、折檻を受けてしまう。心身共にボロボロになった豊菊を介抱したのは、博打の罪で流人となって送られてきたばかりの喜三郎(西島千博)。日頃、男たちの’慰み者’として姉御肌を効かせていた豊菊が「こんな汚れた体で、こんな島の土になりたくない」と嘆き悲しむ姿を見て、喜三郎は優しく豊菊を抱擁しながら誓う。「俺が江戸に帰してやる」。そして、喜三郎は愛する者のため、絶対不可能とされた「抜け舟」に命を懸けて挑んでいく・・・

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レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

この映画の原作である團 紀彦作の「るにんせん」を先日読んだので、見てみた。八丈島に関する話は、近藤富蔵が主人公の「海嘯―逸と富蔵の八丈島」や佐原喜三郎が主人公の「るにんせん」などを読んでいたので、映像としての八丈島やその生活風景、人々の様子などを見ることができ、より実感としてイメージができた点はよかったと思う。

原作の「るにんせん」が史実をもとにした作品であるのに、この映画ではかなり史実を脚色している。たぶんその理由は、海外での評価を考えた脚本と松坂慶子という大物女優のキャスティングにあると思われる。

この映画では、麻里也演じる花鳥が抜け船に失敗して捕えられ、松坂慶子演じる豊菊が佐原喜三郎と抜け船に成功して江戸にたどり着いているが、史実としては、花鳥と豊菊は逆である。花鳥と佐原喜三郎たちが抜け船に成功した後、置いて行かれた豊菊が何人かと抜け船を実行するが失敗しているのが史実である。そして喜三郎は江戸で捕まったわけではない。

最後に喜三郎が江戸で捕まる時に大立ち回りをするが、このシーンは必要か?と思いながら観ていたが、最後に喜三郎がはしごに括り付けられて十字架に架けられたようになり、それを豊菊が悲しい目で見つめるシーンを見て気付いた。喜三郎をイエス、豊菊をマグダラのマリアにみたてた脚本なのである。たぶんこの脚本ありきで俳優をキャスティングしたので、イエスの風貌に似せた喜三郎になったのである。たぶん元吉原の豊菊と娼婦だったと言われるマグダラのマリアから着想を得たと思われる。

海外での評価を考えてそのような脚本にしたのだろうと思われるが、原作を知っているので、この脚本のせいで原作の良さがかなり消されていると感じた。なぜなら、佐原喜三郎は、もともと侠客であり、かなりの手下をもって博打の盆を開帳していたやり手だった。そして日本国史上はじめて国土の正確な姿を明らかにし伊能忠敬と出身地が同じで、当時八丈島に流されていた択捉探検で有名な近藤重蔵の長男・近藤富蔵が隠し持っていた伊能図を盗み見、潮の流れや風の状況などを観測して八丈島から江戸への抜け船の航路を検討している。実際、八丈島で喜三郎はこの映画のような仲間ではなく、手下とした流人たちと一緒に抜け船するなど計画立案から実行までをしっかり管理している。

しかし映画にでてくる喜三郎にはまったくそんな感じはなく、流人を統括もせず、抜け船の航路の検討もなんとなくで、実際の抜け船のシーンも非常に短く、あっけないものだった。江戸幕府260年の歴史の中で唯一成功した抜け船のリーダーだった喜三郎には残念ながら見えなかった。

もちろん史実通り、原作通りにする必要はなく、原作を活かして映画がより面白くなるのであれば脚色するのはまったく問題ないのであるが、まったくよくなっていないので非常に残念に思った。麻里也と松坂慶子では演技力が全然違うため花鳥と豊菊が史実と逆になったのだと思われる。年齢的にも十代後半だった花鳥を松坂慶子が演じるのは無理があったのだろう。この映画をなんとか最後まで見ることができたのは松坂慶子の演技力のおかげだと思う。そうでなければ間延びしたテンポの悪い映画だったのでなかなか厳しかったと思う。奥田瑛二は、松坂慶子に救われたのだと思う。

八丈島を流人が抜け船するのは一大プロジェクトである。そのプロジェクトを立案し、情報を集め、要員をアサインし、スケジュールを組み、タスクを割り振り、進捗を管理するプロジェクトリーダーが佐原喜三郎である。情報が制限された状態であらゆる手をつかって必要な情報を集め、組み立て、士気を高め、誰もやったことがないゴールまでもっていくというロマンに恋愛、情実などが絡み合ったのが本作品であるべきだったと思う。期待していただけに結構がっかりした。

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