★★★★★[映画] ブラック・スワン – Black Swan (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 6 分

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ニューヨークのバレエ・カンパニーに所属するニナは、元ダンサーの母親の寵愛のもと、人生のすべてをバレエに捧げていた。そんな彼女に新作「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが訪れる。しかし純真な白鳥の女王だけでなく、邪悪で官能的な黒鳥も演じねばならないこの難役は、優等生タイプのニナにとってハードルの高すぎる挑戦だった。さらに黒鳥役が似合う奔放な新人ダンサー、リリーの出現も、ニナを精神的に追いつめていく。やがて役作りに没頭するあまり極度の混乱に陥ったニナは、現実と悪夢の狭間をさまよい、自らの心の闇に囚われていくのだった……。

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レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

満足感に酔いしれることができるエクスタシー映画である。非常に自分好みである。

バレエ「白鳥の湖」を舞台とした美少女バレリーナ・ニナのバレリーナとしての成長と女性としての成長を描いた作品である。「白鳥の湖」を見たことがない人は、まず「白鳥の湖」のざっとした内容を頭に入れておくと映画をより深く理解できるかと思う。



「白鳥の湖」は、チャイコフスキー作のバレエ作品で3大バレエの1つである。ストーリーは、少女オデットを悪魔ロッドバルトが呪いによって白鳥に変えてしまうところから始まる。そして白鳥が住む湖へ狩りに向かったジークフリート王子に月の光の前だけ人間の姿に戻ったオデットがみそめられる。オデットの呪いが誰も愛したことのない男性に愛を誓ってもらうことによってとけることを知った王子は翌日の舞踏会に来るようにオデットに求める。しかし、舞踏会には悪魔によってオデットに似せられた悪魔の娘オディールが現われ、王子は彼女を花嫁として選ぶ。嘆くオデットに悪魔に騙されたことに気づいた王子が許しを請うが時すでに遅く、絶望した王子とオデットは湖に身を投げて来世で結ばれる(昇天する)。というのがあらすじである。



バレエ「白鳥の湖」では、オデットは白鳥、オディールは黒鳥として表現され、衣装は異なるが同じバレリーナが一人二役を演じる。それを演じる主役を「スワン・クィーン」と呼ぶ。オデットは純真で無垢、オディールは官能的で邪悪と二人の性格はまったくの正反対であり、この役を踊り分けるのは非常に難しいと言われている。



ナタリー・ポートマン演じる主人公のニナは、オデットと同じ純真で無垢な性格で、元バレリーナの母親の元で育てられている。ニナの所属するバレエ団で、「白鳥の湖」を公演することになり、プリマのベスではなく、ニナが「スワン・クィーン」に選ばれる。「白鳥の湖」の白鳥と黒鳥の二面性(舞台)とニナの二面性(映画)がシンクロするような脚本となっている。



バレエ団の監督・トマは、ニナには奔放さ、官能さ、邪悪さが足りず、このままではオディールを演じきれないと指摘する。その頃からニナは精神的なバランスを少しずつ壊していく。精神が傷付いていく様子を体が傷付いていく様子とシンクロさせて表現されている。精神的なバランスが壊れていくことによって、ニナは異様な幻覚を見るようになる。観客は、どこか現実で、どこが幻覚かが分からず不安にさせられる。これはニナ本人にとっても同様で本人も現実と幻覚の境目がわからずに不安とプレッシャーにより妄想が激化していく。



本作品では、母親との対立と自立についても描かれている。元バレリーナの母親は、ニナに大きな愛情を注いでいる。だが、その愛情は時として娘への屈折したコンプレックスが影響し、暴走ぎみになり過度な干渉となっている。それは、年齢にふさわしくない子供のようなニナの部屋やスワン・クィーンに決まった時のお祝いのケーキのシーン、公演当日に休みの連絡を勝手に入れたりすることなどで表現されている。母親が、庇護下にある娘を望み、成熟し自立した娘を望んでいないことがわかる。



そんな母親にずっと従順に生きてきたニナだが、同じバレエ団に所属し、黒鳥のように奔放で官能的なリリーと一緒にクラブへ行って、酒を飲み、ドラッグをきめ、自分の中にある性に目覚め、リリーとのレズビアン行為に至る。しかしリリーとのレズビアン行為はのちに妄想であることがわかる。黒鳥の象徴であるリリーは、もう1人のニナであり、レズビアン行為は白鳥と黒鳥の統合であり、黒鳥的な奔放さと官能をニナが精神的に手に入れたメタファーだと思われる。また、母親へ悪態をつき、オルゴールを壊し、たくさんのぬいぐるみを捨てることによって、従順な娘から反抗的な娘に変わっていることが表現されている。これは、少女から女性への脱皮であり、母親からの自立を表していると思われる。



母親からの自立と同時に、リリーによってスワン・クィーンを奪われるのではないか?という妄想に苛まれる。白鳥的な性格だと思われたニナにもべスのルージュなどを盗んだりしている隠された闇の側面があることが明らかになる。リリーがトマを誘惑している妄想によって嫉妬で心乱され、狂気をエスカレートさせていく。これは優等生だったニナに足りなかった闇の部分の才能の覚醒でもある。



そして公演当日、オデットのリフトに失敗したニナは、控室でオディールは自分が代役をするというリリーをガラスで刺し殺してしまう。リリーの死体を隠した後、後半の演技をするニナ。何かが乗り移ったかのような見事な演技で観客を、出演者を魅了する。再度、控室に戻ったニナにリリーが素晴らしい演技だったと伝えるに来る。この時、ニナは、リリーを刺し殺したと思っていたが、それは妄想で、ガラスで刺していたのは自分自身であったことに気付く。



最後に、ニナは、湖に身を投げてオデットが昇天(エクスタシー)するシーンの演技をする。それは同時にニナの昇天(エクスタシー)ともシンクロしている。自分で刺したガラスの傷から血があふれ出す中でニナは、「完璧」とつぶやく。これは、まさに絶頂における死こそ完璧であるというメッセージかもしれない。自らの闇と向き合い、心を解放した時に初めてエクスタシーを感じる。母親から自立し、クラブで初めてきめたドラッグがエクスタシーであった。



本作品では、トマがジークフリート王子と悪魔ロッドバルトの象徴であり、リリーがオディールの象徴である。そんな中で「白鳥の湖」のストーリーとシンクロしてオデットの象徴であるニナは、最後に昇天(エクスタシー)してエンドロールを迎える。
エンドロールの純白から漆黒への移行によって、ニナが昇天(エクスタシー)したことを表現しているのではないかと思う。官能的な少女の成長物語であり、精神的な狂気を上手く表現している作品だと思う。


ブラック・スワン (字幕版)

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