★★★★☆[映画] 必死剣鳥刺し (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 4 分

時は江戸。東北は海坂藩の物頭・兼見三左エ門(豊川悦司)は、藩主・右京太夫(村上淳)の愛妾・連子(関めぐみ)を城中で刺し殺した。最愛の妻・睦江(戸田菜穂)を病で喪った三左エ門にとって、失政の元凶である連子刺殺は死に場所を求めた武士の意地でもあった。が、意外にも寛大な処分が下され、一年の閉門後、再び藩主の傍らに仕えることになる。腑に落ちない想いを抱きつつも、身の周りの世話をする亡妻の姪・里尾(池脇千鶴)の献身によって、一度命を棄てた男は再び生きる力を取り戻してゆく。ある日、中老・津田民部(岸部一徳)から秘命を受ける。藩主家と対立しているご別家の帯屋隼人正(吉川晃司)から藩主を守れというものだった。そして待ち受ける隼人正との決着の日。三左エ門は、想像を絶する過酷な運命に翻弄されていく。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

江戸時代の武士と昭和的なサラリーマンの中間管理職をダブらせるいつもの藤沢ワールドである。バカ社長の愛人が役員会に口を挟み、業績が悪化している状況の中で役員間での派閥抗争に巻き込まれる中間管理職を江戸時代の東北にある藩の武士が演じるというストーリーである。

一般社員の間では不満と噂がいっぱいとなり、奥向けの費用削減を建白した幹部が腹を切らされる場面は、まさにリストラである。業績不振、リストラ、モチベーション低下などまさに落ち目の企業を思い起こさせる。そのような状況の中で、ある中堅の中間管理職は、奥さんを亡くし、子供もいないという中で起こした事件から物語は始まる。

その事件の前に演じられていたのが能であり、その演目が、「殺生石 白頭」である。映画のこういった場面でまったく関係のない能が演じられるわけがなく、どのような演目かと調べてみると、鳥羽上皇に寵愛された女性が実は化生の者で、陰陽師にそれを見破られ、殺されたのを恨み、怨霊となって石にとりつき、近づく生き物すべてを殺していたが、通りがかった僧侶に調伏されて成仏するというお話である。

鳥羽上皇に取り入った化生の者は、明らかに藩主の愛妾である連子を連想させ、連子によって藩士や農民が死んでいく様はまさに殺生石のようであり、死んでからなお敵を殺す必死剣を表しているとも考えられる。

そのような演目が終わった後に連子が拍手し、それに続き藩主も拍手する。これによって能がわかっていないバカであることを印象づけているのだと感じた。重苦しく、緊張感のある内容であったが、非常によく考えられた脚本であると思う。必死剣鳥刺しという名前にも罠が仕掛けられてあったしね。

豊川悦司演じる兼見三左エ門は、物頭であるが、物頭といえば足軽大将であり、まさに課長クラスの中間管理職である。280石という石高も妥当でまさに上士の中の中堅藩士である。登場する役員クラスは、ご別家と言われる吉川晃司演じる藩主一門の家老職・帯屋隼人正と、岸部一徳演じる中老・津田民部である。藩主一門の家老職は、実務をしない家老であるので副会長や顧問に近いかもしれない。中老とは、家老補佐であり、家老を副社長、専務取締役とすれば常務取締役クラスである。

この副会長と常務取締役との派閥抗争に巻き込まれたのが課長の豊川悦司という感じである。島耕作ではなく、同じ作者の老いゆく過程で光り輝く、恋愛を軸に人生観などを描いた「黄昏流星群」のようである。

達人同士である帯屋隼人正と兼見三左エ門の切り合いの殺陣は見どころである。時代劇で昭和を感じる哀愁漂ういい作品である。個人的には吉川晃司の渋さがよかった。



殺生石についてはコチラへ

より詳しく知りたい方はこちらへ

必死剣 鳥刺し

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です