★★★★★[映画] インセプション – inception (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

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人が夢に入っている時に潜在意識の奥底にまで潜り込み、他人のアイデアを盗む出すという、犯罪分野においては最高技術を持つスペシャリストのコブ。しかし彼はその才能ゆえに、最愛のものを失う。そんなコブに、「インセプション」と呼ばれるミッションが課せられる。レオナルド・ディカプリオと渡辺謙が初共演。

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レビュー・感想・解説・ネタバレ

完全ネタばれなので、映画未視聴の方は、決して読まないように。

魂の救済の物語である。

ディカプリオ演じる主人公・コブは、「エクストラクション」と呼ばれる夢を見ている間に潜在意識に入り込みアイデアを盗み取るプロである。ターゲットを何がしらかの方法で眠らせた後、ある機器を使用し、自分自身の意識をターゲットの夢の中に潜入させるという手法を取る。潜入するのは複数人でもかまわない。そんなコブが、渡辺謙演じる世界的な実業家・サイトウの夢に侵入する。サイトウの方もエクストラクション防衛の訓練を受けていたため、夢の中でさらに眠らせ、その夢に侵入するというより深い潜在意識で侵入するという罠をしかけるが、失敗し、エクストラクションを依頼されていた組織(コボル社)から追われることとなる。

そんなコブにサイトウは、ある提案をする。それが本作の題名にもなっている「インセプション」である。インセプション(inception)という単語は、始まりや開始、発端という意味があるが、the inception of an idea というような使い方をする。これは「アイデアの発端」という意味であるが、本作では、ターゲットに特定のアイデアを植え付けるというエクストラクションの逆の行為を意味している。

サイトウは、ライバル会社のトップの死期がせまっていることを知り、後継ぎとなる息子・ロバートをターゲットに選ぶ。ロバートが引き継いだ会社をつぶすようなアイデアを潜在意識に植え付けるようにコブに依頼する。コブは以前、インセプションを妻に対して行った結果、妻が自殺し、殺人を疑われ、子供たちを残してアメリカから逃げている状態であったため、サイトウは、その解決を見返りとして提案する。
コブは依頼を受け、仲間を集める。

義父である教授に紹介された夢の設計士であるアリアドネは、夢の設計を天地創造だという。コブが仲間の調合師を探しに行った時、調合師の店の地下では、12人の人が毎日、夢を共有しに来ていた。そこでは機器を中心に12人が円のように並んでつながっていた。それはまさに12人の使徒が救世主を信じる世界(夢)を共有しているようにも思えた。彼らは毎日寝に来ているのか?と尋ねられた老管理人は、コブに答える。「彼らは目覚めに来ている。彼らにとっては夢が現実だ。あんたは違うといえるのかな?」と。

アリアドネは、夢への侵入についてはまったくの無知であるため、彼女への説明が、観客への説明となっている。彼女への説明の中に、この映画の最後を解釈する上でのヒントが隠れていると思われる。それが、夢にいるのか現実にいるのかの判断である。コブにとっては、コマがそれであるが、コマ(トーテム)の回転が止まれば現実、回り続ければ夢の世界という話である。準備を整え、ロバートへのインセプションを開始する。

現実世界は、「飛行機の機内(ファーストクラス)」から始まる。機器を操作するのはキャビンアテンダントで、仲間全員(6人)でロバートの夢に侵入する。

夢の第1階層は、「ロサンゼルス」である。ここでは、父親の右腕であるブラウニングを利用し、父親の遺言の存在を意識させる。ロバートの潜在意識の自己防衛反応により現れた集団により銃撃を受け、サイトウが負傷するが、車の中でロバートを眠らせ、ユスフを残して残り5人でロバートの夢に侵入する。

夢の第2階層は、「ホテル」である。ここでは、ロバートに今いる場所が夢であることを打ち明け、夢の警護人を装い、ブラウニングの裏切りを意識させた上で、ブラウニングを探るために彼の意識へ侵入することをロバートに提案する。その嘘の提案でロバートを眠らせ、アーサーを残して残り4人でロバートの夢に侵入する。

夢の第3階層は、「冬山の護衛された病院」である。ここが最終目的地であり、ここではロバートに父親の後を継ぐのではなく、自分の道を進むというアイデアを潜在意識へ植え付けようとするが、予期せぬ出来事が起こる。コブの死んだ妻・モルが突然現れ、ロバートを射殺。通常、夢の中で死ぬと夢から覚める(夢の1階層上へ上がる)のだが、今回は特殊な鎮静剤を使っているため潜在意識のさらに下層(虚無)に落ちることになった。サイトウも第1階層で受けた傷の影響で瀕死の状態となる。作戦を続行するために、コブとアリアドネは、イームスとサイトウを残して虚無(limbo)へ侵入する。

虚無(limbo)は、夢の第4階層とは少し違うと思われる。なぜなら、鎮静剤を使っている場合、第1階層で死んでも、第2階層で死んでも虚無(limbo)に落ちると表現されているからである。もともとこの鎮静剤自体が第3階層までしか安定的に保時できないものなので、夢としての最下層は第3階層で、夢ではない潜在意識の部分が虚無(limbo)と言われる部分かと思われる。

limboは、地獄の辺土、忘却、無視された状態などの意味があるが、キリスト教的には洗礼を受けていない死者が行く場所、地獄と天国の間と言われている。

夢のどの階層で死んでも虚無(limbo)に落ちるということは、現実世界で夢を共有しているコブたち7人は、同じ虚無(limbo)を共有していると考えられる。よって、第3階層で死んだロバートとサイトウ、機器で虚無へ落ちたコブとアリアドネは同じステージにいると思われる。(以前、虚無に行ったことがあるコブは虚無への落ち方を知っていたか、機器に虚無へ落ちるボタンがあるのかどちらかだと思う。)

虚無へ落ちたコブとアリアドネは、昔、コブが造ったと思われる虚無世界でモルがロバートを監禁していると予想。コブをモルに君は本物ではなく、影であると別れを告げるが、コブはモルにナイフで刺される。それを見たアリアドネがモルを射殺する。コブはサイトウを探すために虚無へ残り、アリアドネは、ロバートをビルから落下させることで第3階層へ復帰させる。

アリアドネに撃たれたモルは、コブの腕の中で「もう行っていいんだ」という言葉の後に死ぬ。このモルは、コブの投影であるため、コブの中でのモルへの罪の意識(トラウマ)を乗り越えたという暗示かと思われる。地獄と天国の間である虚無(limbo)での死は、魂の救済という意味があると思う。

その後、第3階層でロバートは父親に会い、インセプションが完了した後、順次、上層階へのキックが始まる。虚無では、アリアドネは、コブにサイトウを連れて戻るよう叫んだあと自分もビルから落下し、第3階層へ復帰する。(この時、虚無世界でも崩壊が始まっている様子が描かれている)

第3階層から第2階層、さらには第1階層とコブとサイトウ以外の5人は、復帰する。現実世界へのキックは描かれていないが、現実世界での鎮静剤の10時間というタイムリミットにより復帰したと予想する。(ロバートの自己防衛集団に殺されると虚無に落ちるため)

この後、コブは映画冒頭のシーンである海辺に打ち上げられた状態となる。コブとアリアドネが機器によって一緒に虚無(limbo)に落ちた際も海辺に打ち上げられた状態となっていたことから、このシーンは、虚無(limbo)であると考えられる。虚無(limbo)でモルに刺されたコブは、アリアドネ落下後に死んで第3階層へ復帰するが、すでに第3階層は崩壊していたため、第3階層で死に、再度、虚無(limbo)に落ちて来たのが映画冒頭のシーンと考えられる。

虚無(limbo)から夢世界への復帰は自殺でOKだが、鎮静剤を飲んでいる状態での夢世界では、死は虚無(limbo)へ落ち、上層階への復帰は、キックまたは鎮静剤が切れるかのどちらかが必要かと思われる。夢の奥にいけばいくほど、時間が早くながれる設定らしく、一階層下げるごとに約20倍の速さになるらしい。現実世界の飛行機の中では10時間と設定されていたので、第1階層は200時間(約8日)、第2階層は、4000時間(約166日)、第3階層は、8万時間(約9年)となる。虚無(limbo)がどれくらい早く時間が流れるかは示されていないが、第3階層の20倍だとすると、160万時間(約180年)となる。

「夢で死ねば現実に戻る」と思っているサイトウは、第3階層で死んだ後、虚無(limbo)に落ちるが、虚無(limbo)を現実だと思っているので、歳をとっているが、コブは虚無(limbo)を現実でないと知っているので歳はとっていない。コブはサイトウに、ここが現実でないと説得し、ともに自殺したと思われる。

ここからが問題である。

自殺したコブとサイトウは、どこに戻ったのだろうか?

現実世界で鎮静剤が効いている間は、虚無(limbo)から死によって夢世界に戻ったとしても夢世界では死んでいるので、再度虚無(limbo)に落ちるというループになる。しかし、効かなくなった後であれば、死によって、虚無(limbo)→第3階層→第2階層→第1階層→現実世界と順に戻れる、または、夢の主(ロバート)が目が覚めた後であれば、夢がなくなっているため、虚無(limbo)から現実世界に一気に戻れると考えられる。コブはサイトウと一緒に戻るために、現実世界で鎮静剤が切れる(またはロバートが目覚める)まで虚無で待ち続けていたというのがそれなりに納得できる仮定ではないだろうか。

そう考えれば、現実世界の飛行機の中で、コブとサイトウが最後に目を開け、ほかの5人(ロバートも)はすでに目を覚まし、機器や接続ケーブルもない映像になっているのも理解できる。

つまり、夢の第1階層に戻ってきていた5人は鎮静剤が切れたタイミングかロバートが夢から覚めたタイミングで現実世界に戻っていたが、その際、コブとサイトウは、魂の抜け殻(植物人間状態)であったと考えられる。

そして現実世界にもどったコブは、サイトウにより電話一本で指名手配を抹消され無事、入国審査を通過し、義父である教授に迎えられ、子供たちに会うことになる。この時、コマ(トーテム)を回して、夢かどうかを確認しようとするが、子供たちの顔をみてしまったために、コマ(トーテム)の結果を見ずに現実だと認識したようである。映画はコマ(トーテム)がバランスを崩そうとする寸前で、画面が暗転して終わる。この演出によって、多くの人はコブは現実に戻ってきたと認識し、ハッピーエンドだと思うはずであるが、個人的にはそうではないと思う。

結論をいえば、これは義父であるマイルス教授によるコブへのインセプションであり、まだコブはその夢の中にいると考える。理由としては、サイトウから依頼されたインセプションが成功したあとの世界が、コブに圧倒的に都合が良いからである。まさにコブがこうなりたい!こうなってほしいという願望そのものである。では義父である教授はどのような目的でコブにインセプションを行ったか?であるが、これこそ、この映画の真のテーマである「魂の救済」のためである。

コブが忘れることができなかったモルへの罪の意識(トラウマ)を、コブの潜在意識の奥で乗り越えさせることが、義父の目的である。その目的を達成し、子供たちの元へ戻ってきたコブ。最後に子供たちをコブに引き合わせた後の義父の顔がそれを物語っているように思えた。自分の教え子でもあるアリアドネやサイトウなどは、コブの夢へ義父が送り込んだ可能性が高い。アリアドネは、学生で夢の世界についても初級者であるが、プロであるコブにアドバイスするほどにまでなる。そして、第3階層で失敗したと言うコブとイームスに虚無へ行けばいいといい、コブのトラウマであった妻のモルを撃つことでモルとの決別に決定的な役割を果たす。アリアドネという名前は、ギリシャ神話にて迷宮より脱出する手助けをする女神に由来しており、夢という迷宮から脱出する手助けをする暗示となっている。

最後のシーンではコマがバランスを崩しそうではないか!という指摘があるが、それこそ、監督が観客にしかけたインセプションである。コマ(トーテム)の回転が止まれば現実、回り続ければ夢の世界というのは、トーテムを人に知られていない場合である。つまりトーテムを人に知られていた場合、夢の中でトーテムを操作され、「倒される」可能性がある。もし義父がコブのコマ(トーテム)について知っていたらどうだろうか・・・義父はコブに人の心を操作する方法を教えた師でもある。そして、コマ(トーテム)は、もともと自分の娘であり、コブの妻であるモルのものである。人の心を操作する研究者である義父がそれを探ろうと思えば、十分探り知ることはできると考える。サイトウへのエクストラクションが失敗した後、コブはホテルの部屋でコマ(トーテム)を回し、コマは倒れる。これによって観客は、そこが現実だと認識するが、これは最後のシーンをミスリードさせる罠である。これによって多くの人が騙されたと考える。

本当の現実世界では、コブは指名手配にもなっていないし、コボル社にも追われていないはずである。ただ、妻が自殺したのは事実でそれによって深く傷つき、罪の意識に苛まれ、心を閉ざしているのだろう。それを見かねた義父が、子供たちのためにも、自分の娘のためにもコブの魂を救済しようと考え、このようなインセプションを考え出したと思われる。最後のシーンの後、子供たちと触れ合い、愛情を取り戻し、妻へのトラウマを解消したことを確認した段階で、義父はコブを夢から覚ますのだろうと思われる。それがこの映画の真のハッピーエンドと言えるだろう。


インセプション(字幕版)

インセプション(日本語吹替版)

これは個人的な解釈であり、他の解釈を否定するものではありません。

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