北極点グリーンランド単独行 – 植村 直己 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 5 分

白熊の襲来、乱氷の障壁、ブリザードの酷寒……多くの困難と戦い世界で初めて単独で犬橇を駆って北極点に到達し、グリーンランドを縦断した不滅の冒険の全記録!

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書評・レビュー・感想

極北に駆ける」、「北極圏一万二千キロ」に続く極北犬橇シリーズの第三弾である。
今回は、北極点犬橇単独行とグリーンランド犬橇縦断という2つの旅が1冊にまとまっている。前著である「極北に駆ける」と「北極圏一万二千キロ」では、本当に単独で資金的にも少額の上で実行しているが、今回は、大きな資金を調達し、多くの人を巻き込み、ベースキャンプとの通信やNASAが開発したDCPによる情報ツール、非常用携帯無線、飛行機による補給など文明の利器を多用した旅となっているという違いがある。著者が本書でも書いている通り、だからといって何かがカンタンになったかといえばそうではなく、結局は自分一人を頼るしかないことは変わらないということだった。植村は、コロンビア岬から北極点に向けて出発している。そこは、1909年に初めて北極点に到達したロバート・ピアリ(アメリカ)の犬橇隊の出発点でもあった。
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出典:ナショナルジオグラフィック 植村直己 夢の軌跡
植村直己の北極点への犬橇の旅と同時期に日大隊も犬橇での北極点を目指している。植村直己は単独であるが、日大隊は現地のイヌイットなどの協力を得て複数人で数百頭の犬によって行われている。どちらが早く到達するか?という勝負ではなかったが、日大隊が北極点に先についたことを知った植村直己は本書に口惜しいという本音を書いている。

日大隊が先に北極点に到達するのを知ったとき、「口惜しさが、思いがけず、不意に襲ってきた」。なぜなのかは自分でもよくわからない。しかし、ただ、口惜しい。一日中、「口惜しいな、口惜しいな」と、呪文みたいに呟きつづけた。

日大隊と植村直己は、方法も目的も違っており、自分の北極点単独行は断じてレースであってはならないとしているにもかかわらず、こう書いているだけあって事実なのだと思う。
結果としては、植村よりも数日早く、日大隊は、日本人最初の北極点到達を成し遂げる。その後、植村が世界初の単独北極点到達を成し遂げる。
この日大隊には、前著の時にも紹介したNHKスペシャル「日本人イヌイット 北極圏に生きる」でグリーンランドで生きる日本人イヌイットとして登場していた大島育雄さんも参加している。彼は日大の山岳部OBだから当然である。ただ、イヌイットから集めた100頭以上の犬が空輸中の事故で死亡したり、日本人とイヌイットの調整に苦しんだりしたことにより、この時のことは大島さんは多くを語らないらしい。
植村直己は、北極点への犬橇単独行とグリーンランド縦断を連続しておこなっている。そのため、暖かくなると氷が解けだすおそれがあり、北極点への犬橇単独行が予定よりも遅れたことによって、北極点からグリーンランドへの帰りは飛行機で戻ることを選択している。
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出典:ナショナルジオグラフィック 植村直己 夢の軌跡
犬橇によるグリーンランド縦断単独行も、北極点と同様にベースキャンプとの通信や飛行機による補給を利用している。約3000キロの旅である。
本書の中で植村は以下のように述べている。

私は登山や冒険旅行にすがって生きてきたのだ。それができないとしたら、私という存在は無になる。屈辱の中に、私という存在が埋没してしまう。その恐怖から身をかわし、自分が味わえるただ一つの充実感を味わうために、私は夢を大きくひろげつづけてきた。一つのプランを実現すると、さらに大きな、困難なプランを立てた。いつも前進があるだけだった。失敗したら逃げ道がないと思った。旅の中止は、私が自分なりに積み上げてきた実績を、一挙にフイにすることだ。そうしたら、自分はもう何をしたらよいかわからなくなる。最初の屈辱の中に戻るだけだ。

就職する自信がなく、冒険にすがってきたという心の叫びのように読めた。
グリーンランド縦断でもさまざまな問題を乗り越えて最終目的地に到着している。この北極点犬橇単独行とグリーンランド縦断犬橇単独行によって、1979年にイギリス王室から優れた冒険家に贈られるバラー・イン・スポーツ章を受賞している。
そして、日本人として初めてナショナル・ジオグラフィック誌の表紙を飾った。
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出典:ナショナルジオグラフィック 植村直己 夢の軌跡
当時、食料やそりから犬に至るまでヘリコプターや飛行機で補給をしたことなどに対して一部で疑問と批判も出たらしいが、極点を極めるというのはそれほど難しいことなんだと思う。ただ、「極北に駆ける」や「北極圏一万二千キロ」のようにイヌイットの村に泊まりながら旅をしていくスタイルの方が楽しく読めた分、本書はなかなかキツイ部分があった。
今回の旅を通じて、南極横断の夢がまた一歩近づいたと本書では述べられている。そしてその後、南極へ調査に行き、成功を確信していた植村だったが、決して実行されることはなかった。実行していたらどうなっただろうかと思わずにはいられなかった。
現代の日本にも極地冒険家はいる。
2012年北極点無補給単独踏を目標としている荻田泰永さんである。日本人初の北極点無補給単独踏破へ向けた冒険を今年行っていたが、開始から14日でリタイアしているが、引き続き目標を目指しているとのこと。

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