極北に駆ける – 植村 直己 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 4 分

エベレストをはじめ五大陸最高峰を制覇した男の次の夢は、犬ぞりによる南極大陸横断だった。新たな目標を胸に、彼は地球最北端のイヌイットの村へと極地トレーニングに向かう。極寒の過酷な環境と、そこに住む人びととの暖かい交流。そして覚えたての犬ぞりを駆って、ひとり三千キロの氷原を走った冒険の記録。

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書評・レビュー・感想

文明崩壊」でノルウェー領グリーンランドの住民(スカンディナヴィア人)が絶滅した話が読み、またNHKスペシャル「日本人イヌイット 北極圏に生きる」でグリーンランドで生きる日本人イヌイットのドキュメンタリーを観て、グリーンランドならびにイヌイットについて興味がわき、極地トレーニングのために、グリーンランドのイヌイットと1年近く一緒に生活した冒険家の植村直己さんの作品を読んだ。
植村直己さんが滞在したのが、グリーンランド最北端のイヌイット村であるシオラパルクである。NHKスペシャルに出てきたのもシオラパルクであるが、これにはわけがある。本書の中でも出てくるが、シオラパルクに住む日本人イヌイットの大島育雄さんは、この時(1972年)、植村直己さんとシオラパルクで一緒に生活した仲間でもある。大島育雄さんはそのまま、シオラパルクに残り、結婚し、子供をつくり、孫まででき、現在に至っている。本書で植村直己さんは、大島さんのことを以下のように述べている。

大島育雄君は日大の山岳部時代からグリーンランドにとりつかれた二十五歳の冒険野郎で、私がシオラパルクにはいった三ヵ月後に私のところにきて生活していたのである。

その後、一緒にオヒョウ釣りをした話などが載っている。
NHKスペシャルでイヌイットの生活について映像で見ていたのである程度予備知識があったが、NHKが映像化していない(できない)部分が本書には書かれてあった。それは性と酒である。
イヌイットの性は、日本人の感覚とはかなり違うと書かれている。既婚、未婚問わず、性は開放的で、フリーセックスに近い感じである。よって私生児もかなり多いとのこと。そして、酒、つまりアルコールであるが、白人との接触により今までは飲酒の習慣がなかったが、飲酒におぼれる人が続出したらしく、現在では、政府によって毎月購入できるアルコール量に一定に限度が設けられているほどである。
本書では以下のように述べられている。

東海岸のアンマサリックでは、昼ひなかから酒に酔いしれているエスキモーたちを何度も見た。もしこのシオラパルクで、無制限に酒を売ったらどういうことになるだろう。”酒こそ天国へ導いてくれる神の水”という彼らのことだ。もし酒が自由に手に入るなら、金のある限り酒に浸り続け、ついには身を亡ぼしてしまうだろう。デンマーク政府が、エスキモーへの酒の販売量をおさえているのはそのためであった。

たしかにこのあたりをNHKが映像にするのは難しいのかもしれない。植村直己さんは、現地での生活に溶け込み、極地での生活方法や犬そりの操り方などを短期間に学んでいる。そして現地のある夫婦の養子にまでなっている。
犬そりの技術も少しづつ向上し、はじめは隣町までの移動が、少しづつ距離を伸ばし、現地のイヌイットでも誰もやったことがないというシオラパルクからウペルナビク(ウパナビック)への往復約3,000キロの犬そり単独旅行へ行く。
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この3,000キロの犬そり単独旅行は、約3か月かかっているが、非常に読み応えのある冒険譚であった。非常に苦しく、つらい局面があったかと思うが、読むものには楽しく刺激的な内容となっている。著者は、このシオラパルクでの10か月にわたる生活は、最終目的である南極計画を考えるとおきに大きな支えになると述べている。
おススメの冒険物語である。
植村直己さんの関連書籍について

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