文明崩壊 (下) – ジャレド・ダイアモンド (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 5 分

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
ジャレド・ダイアモンド
草思社

社会が繁栄すると人口が増える。人口が増えると、農作物の無理な増産やエネルギー消費量の拡大などで環境に過大な負荷が生じる。その結果、食糧・エネルギー不足となり、多すぎる人間が少なすぎる資源を巡って争うなど、共同体内部の衝突が激化する。飢餓・戦争・病気によって人口は減少し、社会は崩壊する――こういう具合だ。

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書評・レビュー・感想

著者は崩壊の潜在的要因として、環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、友好的な取引相手、環境問題に対する社会の対応という5つの枠組みを設定。崩壊した社会、または存続した社会に当てはめて、検証していく。崩壊を免れた社会の事例として、徳川幕府による「上から下」への統制で、持続可能な林業を作り上げた江戸時代の日本も登場する。
上巻に続く下巻であるが、社会崩壊の危機を免れた例として、ニューギニア高地、ティコピア島、江戸時代の日本を取り上げている。そして上巻では過去に崩壊した社会について分析していたが、下巻では、現代の社会について分析している。対象となっているのは、ルワンダ、ドミニカ、ハイチ、中国、オーストラリアである。
興味を持ったのは、ニューギニア高地、ティコピア島とドミニカ、ハイチである。江戸時代の日本については知っていることが多く、ルワンダに関しては、「アフリカ 苦悩する大陸」で学んだ。中国、オーストラリアに関してもある程度の知識があったので、補足情報的な感じだった。
ニューギニアは、オーストラリアのすぐ北側にあるグリーンランドにつぐ、世界で2番目に大きな島であり、日本の国土の約2倍の大きさがある島である。ニューギニアは、文明が崩壊したイースター島やピトケアン島、ノルウェー領グリーンランドのように、森林伐採による木材供給不足や土壌侵食が起こったが、この危機を乗り越えている。森林伐採による木材供給不足には、生長の早い樹木の植林、育林を行い、育林を長期的に行うことにより根が土を保持し、土壌侵食を防ぎ、さらに落ち葉や根粒による土壌の地力の回復をもたらした。豪雨地帯特有の排水路設計などの農業技術の発達も影響し、様々な環境の変化から農業生産高を守っている。
人口増加による食糧・エネルギー不足には、戦争による自然減や嬰児殺し、避妊、堕胎などによる人口抑制策で対応し、農業が起こってから7千年間にわたって社会を維持している。
ただ、今日では戦争の終結、公衆衛生の発達などにより人口が激増している。嬰児殺しなどの対策は現在の社会では認められないため、著者は新しい解決策が必要であるがまだ見えていないと述べている。
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ティコピア島は、ニューギニアの東、ニュージーランドの北に位置する小さな火山島である。面積は5km²未満で、ピトケアン島に近い大きさの島で人口は約 1,200人。
この島も社会崩壊の危機を免れ、3千年間、社会を維持している。この島では総面積の大部分を果樹園が占め、すべてをしっかりと管理しており、しげるすべての植物が食用となっている。そして乱獲を防ぐために魚を取るのに首長の許可を必要とし、持続可能な食糧供給を達成するために島全体がコントロールされている。過去に焼畑式農業から果樹園へ、養豚業から漁業へ転換して環境を守っている。
年間2個以上のサイクロンが襲来する島であり、それにより作物が全滅する危険があるため、非常食の準備を行っている。そして島が維持できる人口以上に増加しないような人口抑制策が採られている。そのために毎年、首長が儀式を行い、人口ゼロ成長の理念を説いている。
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ドミニカとハイチがあるイスパニョーラ島は、カリブ海に浮かぶ島で、カリブ海の中ではキューバの次に大きな島となっている。島の西側3分の1をハイチ共和国、東側3分の2をドミニカ共和国が統治している。このドミニカとハイチは同じ島で生活しながら非常に対照的な状況になっている。
ハイチは、森林伐採が進み不毛な大地が多くなっているが、ドミニカは濃い緑色の風景が広がっている。この森林被害の違いが経済にも影響しており、ハイチは西半球でもっとも貧しい国と言われ、国民の80%は劣悪な貧困状態にある。反対にドミニカは鉱物の輸出や観光立国として繁栄し、国民所得は、ハイチの5倍となっている。
森林被害の違いの原因は歴史など様々な影響があるが、ドミニカの独裁者トルヒーヨがトップダウン式の管理を行ったり、大統領のバラゲールによる不法伐採の軍隊による取り締まりや木炭生産を減らすための液化天然ガスへの切替政策、トルヒーヨ時代にはなかったボトムアップ式の努力の結果である。
ハイチでは、2010年にM7の地震が起き、大統領府や国会議事堂などが倒壊し、死者30万人以上の大災害となった。インフラが壊滅し、コレラが蔓延して死者が発生している。人口1,000万人のうち、150万人以上が家を失ったとされる。震災後2年がたっているが、失業率は70%を超え、貧困の中で苦しんでいる様子がうかがえる。
本書では、ドミニカとハイチの両方の国の人に、両国の将来についてインタビューしているが、ドミニカについては、「悲観的」な意見が多く、ハイチは、「可能性薄」という回答がほとんどだったとのこと。
上下巻ともに非常に読み応えがあった。すばらしい書籍である。

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