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開発プロジェクトで技術よりも何よりも大事なもの――それは「人」。一人一人の人格の尊重、頭を使う人間にふさわしいオフィス、人材の選び方・育て方、結束したチームがもたらす効果、仕事は楽しくあるべきもの、仕事を生み出す組織づくり、という6つの視点から「人」を中心としたプロジェクト開発の大切をユーモラスに語っている。1987年に初版が発行され、多くのソフトウエア・エンジニアの共感を呼んだ名著の改訂第2版。
書評・レビュー・感想
・実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである。
管理者のほとんどは、技術面より、人に気を配っていると思い込んでいる。
しかし、本当にそうしている管理者はめったにいない。
この原因は、管理者が受けた教育にある。
どのように仕事をするかは教えられたが、どのように仕事を管理するかは教えられなかった。
・これこそ管理だ
まだプログラマーの仕事をはじめたばかりのころ、
シャロン・ワインバーグが管理するプロジェクトで仕事をする栄光に浴した。
シャロンは、私が管理の真髄と思うことの生きた事例であった。
雪が降りしきるある日、私は病床から足を引きずってオフィスへ行き、
顧客デモ用の不安定なシステムを立て直そうとしていた。
シャロンは、部屋に入ってきて私を見つけ、コンソールの前で倒れそうになった私
を支えてくれた。
そしてちょっと姿を消したかと思うとスープを持って戻り、私に飲ませて元気づけて
くれた。
私は聞いた。「管理業務が山ほどあるのに、どうしてこんなことまでできるんですか?」
シャロンは、専売特許のにこやかな笑みを顔いっぱいに浮かべて答えた。
「これが管理というものよ。」
・ニューサウスウェールズ大学のデータでは。
目標値設定者による生産性の違い
目標設定者 平均生産性プロジェクト数
1.プログラマー 8.0 19
2.管 理 者 6.6 23
3. 両 方 7.8 16
4.システムアナリスト 9.5 21
5.目標なし 12.0 24
・プログラマーの個人差(プログラミングコンテストの測定結果より)
・最優秀者の測定値は、最低者の約10倍である。
・最優秀者の測定値は、平均的作業者の約 2.5倍である。
・上位半分の平均測定値は、下位半分の平均の2倍以上である。
・生産性と無縁な要因
・プログラミング言語
COBOLやFortranでも、PascalやCでも生産性はほとんど同じであった。
例外:アセンブラ言語・経験年数
2年目組と10年目組で生産性に大きな差はなかった。
例外:6ヶ月以内組・残存不良数
不良0件グループのほうが、不良1件以上グループより若干早く完成
させていた。・年収
年収のバラツキが非常に大きかったが、生産性とはほとんど関連は
なかった。
・チーム形成の不思議な作用
次の6項目は、健全な会社にするための不思議な作用を生み出す戦略的要素である。
1.品質至上主義を作り出す
2.満足感を与える打ち上げをたくさん用意する
3.エリート感覚を醸成する
4.チームに異分子を混ぜることを奨励する
5.成功チームを解散させないで保護する
6.戦術ではなく戦略を与える
1987年に発売以来、絶版になっていた本書は2001年に復刊された。
プロジェクト管理やプロジェクト管理のコンサルテーションを30年近くやってきた著者がこれまで学んできたことをまとめたものが本書です。
短いエッセイを集めたもので、ターゲットはプロジェクト管理者です。管理者に古くから伝わる管理上の言い伝えが実は、間違っていることも多い。古くからの言い伝えは、安易な解決策ばかりだと著者は説く。
「担当者に見積もらせ、それを2倍にせよ」
「休まず働かせよ」
「仕事を家でやらせるな、ヘマをやるだけだ」等である。
しかし、本書では仕事の概念、チームの概念、政治的な折衝など捉えどころのないものに焦点をあてています。個人的には、スペイン流管理とイギリス流管理など視点が面白いなあと感じました。プロジェクトに参加するメンバー、管理者、すべてにお勧めです。
またトム・デマルコ 著の以下の本も参考になる。
・ デッドライン - ソフト開発を成功に導く101の法則
・ ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解
(過去ブログからの転載シリーズ)
本エントリーは、過去に運営していたブログから転載したものであり、一部書き直しならびに追記をしてあります。