「帝国以後」と日本の選択 – エマニュエル トッド (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

「帝国以後」と日本の選択
エマニュエル トッド
藤原書店

世界的大ベストセラー『帝国以後』の著者と日本の気鋭の論者が問う!「核武装」か?「米の保護領」か?世界の守護者どころか、その破壊者となった米国からの自立を強く促す『帝国以後』。「米国の問題はその強さよりむしろその弱さにある」という「反米」とは似て非なる、このアメリカ論を日本はいかに受け止めるか?北朝鮮問題、核問題が騒がれる今日、むしろその根源たる日本の対米従属を正面から問う。

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書評・レビュー・感想

9.11以降にエマニュエル・トッドが書いた「帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕」はアメリカ後を説いた話題の書籍であるが、その「帝国以後」の世界を踏まえて、著者のエマニュエル・トッドと日本の論者が今後の日本について語りあった内容が本書には書かれている。
「帝国以後」についてエマニュエル・トッドが語る部分などは面白いが、正直言って、日本の論者たちが「帝国以後」から何を読み取ったについてはあまり関心がなかったので、面白くなかった。ただ、本書のテーマである帝国以後の日本の選択についてエマニュエル・トッドと日本の論者が討論する部分は読みごたえがあった。
「帝国以後」では、反米VS親米という形からポスト・アメリカニズムという形への変化を指摘しているが、アメリカとの同盟から多極的な連帯へヨーロッパは移行すると予測している。トッドは、なぜ9.11以降の世界でこういったことが起こるのか?について以下のように書いている。

世界が民主主義を発見し、政治的にはアメリカなしでやっていくすべを学びつつあるまさにその時、アメリカの方は、その民主主義的性格を失おうとしており、己が経済的に世界なしでやっていけないことを発見しつつある。

依存関係の逆転である。
この事態の推移は、ヨーロッパでは急速に進んでいるが、日本や極東ではもっとゆっくりと進むとトッドは予想している。それだけ日本がアメリカ帝国システムの解体を受け入れることが難しいと考えているからとのこと。ドイツが統一し、フランスと組み、そしてロシアとも組んで、独仏露の枢軸ができつつあり、アメリカなしでやっていく形ができているが、アジアはそうではないと指摘している。
日本はアジアで孤立し、切り札も少ない。日本の状況はフランスやドイツと比べると複雑であると指摘し、日本が東アジアの安定勢力になるにはヨーロッパの例に学ぶ必要があると説いている。そして、アメリカのシステムが崩壊した場合、日本が核保有というオプションを真剣に考えずに外交的自立を考えていくことはできないとのこと。アジアの安定のため、相互の破壊を避けるために、日本に小規模な核抑止力を持ってくれと国際世論が要求する可能性もあるというが、日本人としてはそれはないだろうなあと感じた。ただ、短期的ではなく、中長期的には、核保有のオプションを考えずに地域安定を考えるのは難しいことには同意である。
日本の論者が日中関係についてばかり言って、日露関係についてほとんど触れないことをトッドは指摘していたが、たしかに政治的にも、経済的にも、中国についてはメディアは取り上げるが、ロシアについて取り上げることは少ない。日本人とフランス人との感覚の違いは明らかであると思う。
日本の今後についての予測は書かれていなかったので、「デモクラシー以後」や「自由貿易は、民主主義を滅ぼす」などのトッドの他書を読んでみたいと思わされた一冊だった。

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