アラブ革命はなぜ起きたか – エマニュエル・トッド (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

アラブ革命はなぜ起きたか 〔デモグラフィーとデモクラシー〕
エマニュエル・トッド
藤原書店

9・11以降、喧伝されてきた「イスラームvs西洋近代」という虚像を覆す!ソ連崩壊、米国衰退を予言したトッドは、「イスラームと近代は相容れない」という欧米の通念に抗し、識字率・出生率・内婚率など人口動態(デモグラフィー)からアラブ革命の根底にあったイスラーム圏で着実に進む近代化・民主化の動きを捉えていた。

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書評・レビュー・感想

歴史人口学者であり、家族人類学者であるエマニュエル・トッドによるアラブ革命論である。本書では、タイトルである「アラブ革命はなぜ起きたのか」への回答として、統計データに基づき、アラブ世界の近代性をあげ、イスラム教ならびにアッラーの影響を否定している。
2011年に起きたアラブの春と呼ばれるアラブ革命であるが、著者は、1979年に起こったイラン革命と同等のものであると指摘している。つまりイランは政治的にアラブ圏より30年先に進んでいるだけということである。そしてその結論を導きだした統計データとは、識字率と出生率である。
著者は、イランの出生率2という数字から、イランの問題は宗教の問題ではなく、ナショナリズムの問題であり、おそらくすでに脱イスラーム教の局面に入っていると指摘している。
社会がどのように近代化するのか?という問いに答えるために著者はあるモデルを作った。それが以下である。
1.男性識字化→2.女性識字化→3.出生率低下
日本は、1850年→ 1900年→ 1920年
朝鮮は、1895年→ 1940年→ 1960年
中国は、1942年→ 1963年→ 1970年
リビアは、1955年→ 1978年→ 1985年
イランは、1964年→ 1981年→ 1985年
エジプトは、1960年→ 1988年→ 1965年
チュニジアは、1960年→ 1975年→ 1965年
2と3が入れ替わることもあるようだが、最終的には、女性1人あたり子供3人を下回る水準に至ることが人口統計学的に近代化したというようである。
この近代化した社会の「移行期」に「移行期危機」が起こると著者は指摘している。この「移行期」の指標としては、男性識字率50%ならびに、青年(20-24歳の)識字率70%を用いている。なぜこの移行期に移行期危機が起こるかというと、識字化されるということは、父親の世代は文字が読めないのに息子は読めることによって伝統的な価値観や秩序が乱され、伝統的な平穏な社会から価値や秩序を自ら作り出さなければならない社会へ移行しなければならず、そこに暴力が発生するからとのこと。
移行期危機の例として、ドイツのナチズム、日本の軍国主義、中国の共産革命などをあげている。
著者は、2030年頃までにブラック・アフリカでの識字化の完了によって世界全体が完全に近代化されると予測している。
近代化した先の話であるが、これは、今日本で言われている少子化問題と関係があり、日本を含め、出生率が世代交代最低水準である2.1以下に落ちた国で社会の老化が始まり、それと同時に教育水準の上昇に伴って起こる民主主義の空洞化=寡頭制が起こるという。この寡頭制については、著者の「デモクラシー以後」に詳しいとのこと。

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