海辺のカフカ – 村上 春樹 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

15歳の誕生日、少年は旅に出た。
第二次世界大戦中の不可解な事件、ネコ探しの老人、少女の幽霊、そして・・・・殺人。
多元的な物語が交錯し、春樹ワールドを作り上げていく。

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書評・レビュー・感想

15歳の少年「田村カフカ」の現実世界と無意識世界での物語が交互に織り込まれていく。無意識世界の物語は、日常世界ではありえないような不思議に満ちている。ネコと話ができる人がいたり、空からヒルが大量に降ってきたり・・・
無意識世界は、わたしたちが知らなかったことを教えてくれるのではなく知っていたにもかかわらず、知らないと思い込んでいたものを思い起こさせてくれる。
無意識世界でのネコ探しの老人「ナカタさん」は15歳の少年の無意識世界での姿である。(夢においてと同じように、抑圧された心的過程はかならず、似ても似つかぬものに偽装して登場する。)ナカタさんは、少年の父親である「ジョニー・ウォーカーさん」を殺す。これは父殺しの物語でもある。
少年は、父親から「父親を殺し、母と姉と交わる」という予言をうける。まさにオイディプス王がうけたものとほぼ同じである。少年はこのエディプス・コンプレックスを乗り越えるために、自分の外にある迷宮「森」に足を踏み入れることによって、自分自身の内にセットされた迷宮「無意識世界」に足を踏みいれることになる。
そして、そこで無意識世界での恋人=母親と出会うことになる。しかし、母親が彼の無意識世界に入るためには犠牲が必要だった。「雨月物語」の「菊花のちぎり」にあるように、ネガティブでない感情によって霊になる(無意識世界に入ることができる)ためには、人は、死ななくてはならない。少年は、エディプス・コンプレックスを乗り越えるために母親を失う事になるが、母親が記憶を燃やし尽くすことによって無意識世界から消滅しながら、少年の心に母親像を刻むことに成功する。そして、少年は、みごと無意識世界からの脱出に成功する。
本書は、父親殺しというメタファーによって父親の価値観からの脱出を表現し、母親探しというメタファーによって恋人像の刷新を表現している。この父殺しと母探しに成功した少年は、「やがて君は眠る。そして目覚めたとき、君は新しい世界の一部になっている。」という本書の最後の1行からもわかるとおり、少年から大人へと成長を遂げることになる。
本書からの教化的なメッセージはひとつに集約されるだろう。それは「成熟せよ!」ということである。お勧めの1冊(上下巻で2冊)である。
(過去ブログからの転載シリーズ)

本エントリーは、過去に運営していたブログから転載したものであり、一部書き直しならびに追記をしてあります。

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