【この記事の所要時間 : 約 3 分】
現代は「うっかり」が通用しない社会である。コンピューターと通信技術の進歩が諸刃の剣となり、間違える時もボタン一つで一瞬のうちに大損害を出せるようになってしまった。事務作業者には、今までと比較にならないほど高い信頼性が厳しく求められている。そもそも工業系の会社は、事故防止の努力を長年続けており、知識と経験を積んでいるのだが、それに比べれば文系の会社の方はミスへの免疫が弱い傾向にある。本書では、新しい視点から「事務ミス」を分析しなおし、ミスや事故が絶えない会社を「ミスに強い組織」に変える具体策を提示する。人はなぜミスをし続けるのか、ミスを防ぐ上で注目すべき力とは何か、さらに、事務ミスを防ぐポイントとして、「手順」や「書式レイアウト」「報告」「通達」「マニュアル」等をどう見直すか、などを、具体例をあげながら紹介する。
書評・レビュー・感想
目次は以下の通り。
I 理論篇 なぜ人はミスをし続けるのか?
第1章 人は「有能」だからこそ間違える
第2章 間違えのメカニズム追究はきりがない
第3章 そもそも「間違い」とは何か?
第4章 時代が事務ミスを許さない!
II 実践篇 ミスはこう防ぐ
第5章 ミスの解決は、「6つの面」から考える
第6章 「気付かない」から事故になる
第7章 異変のはじまりはどこか?
第8章 「ミスをしないこと」は目標になりえるか
第9章 御社の「手順」はムダだらけ
第10章 氾濫する「ダメ書式レイアウト」
第11章 「ミスに強い」組織に変える
ヒューマンエラーについて研究している方だからこその提言はなるほどと思わされた。第一章の人は「有能」だからこそ間違えるなんていうのもそうであり、一般的に作業に熟練することは良いこととされているが、ヒューマンエラーという点から考えると一概にそうとも言い切れないことがわかる。
作業に熟練することや、仕事に過剰に適合するように道具を改造することは、必ずしも良いことずくめではないといえます。
そういった観点からミスに対する考え方を以下のように修正するべきと提言している。
1.「能力が無いからミスをする」ではなく、「むしろ能力の副作用でミスをする」へ
2.「ミスの大半は素人がしでかす」から「玄人のミスも警戒すべき」へ
「間違えのメカニズム追究はきりがない」と著者は言う。
つまり、間違いのパターンの共通化を図ろうとしても、正解はワンパターンだが、間違いは多種多様であるため、できないということである。
その前提にたった上で、実際にミスを防ぐ方法について実践編ではかかれている。実際の業務の中で取り入れるべき内容も多く含まれているかと思うので、とても参考になる。
事務ミスに悩んでいるすべての方へオススメ!