希望の国のエクソダス – 村上 龍 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

2002年秋、80万人の中学生が学校を捨てた。
経済の大停滞が続く中、彼らはネットビジネスを開始、情報戦略を駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長していく。その後、全世界の注目するなかで、彼らのエクソダス(脱出)が始まった。

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書評・レビュー・感想

「君たちには経験が足りないんだよ。」
「そんなことは大人になってから言うものだ。」
「子供のくせにわかったようなことを言うんじゃない。」
「誰のおかげでここまで大きくなったと思っているんだ。」
「大人の世界には大人にしかわからないことがあるんだ。」

そういう表現は、わかりやすく翻訳するとすべて、「うるさい、黙れ!」ということになる。ポンちゃんたちはそういうやりとりにうんざりしている。

「どうして子供は発言してはいけないのか?」
「育ててもらうことに子供が負い目を感じなくてはいけないのはなぜか?」
「大人にしかわからないことがあるのならどうしてそれを解りやすく説明できないのか?」

村上龍の小説は、あいかわらず緊張感がある。そしてその緊張感が途中で途切れることなく最後まで続く力強さがある。村上龍は色々な場所で日本の危機について語り、どうすればよくなるかについて書いている。
本書では中学生によって日本の危機が炙り出され、現状の体勢では危機を脱出することができないことを見せ付けられ、さらに大人にはもう期待しないという現在の日本で起こってもおかしくない設定がなされている。
小説はもちろんファンタジーだが、この小説が成立するためのさまざまな社会的要素は現在あるものとほぼ同じである。そして私たちの社会はいまだに十分な危機感と適応力を持っていない。特に本書では「リスクの特定」と「リスク管理」がポイントなっているように感じた。
大人世代は、「リスクの特定」ができず、リスクの特定ができないためもちろん「リスク管理」もできない。そんな大人に教育してもらうことは無い。ということで集団登校拒否が始まり、自分たちでリスクを特定し、管理していくしか道はないとネットビジネスなどを利用して自分たちがめざす世界を構築していく。
あとがきで、村上龍は「リスク管理の方法は、多様性を維持することしかないと思う。」と書いている。私もそう思う。異文化を理解し、寛容をもって接することが結局は最大のリスク管理、危機管理になるはずだ。明日からがんばって行こうと強く思えるそんな小説です。お勧め!!
(過去ブログからの転載シリーズ)

本エントリーは、過去に運営していたブログから転載したものであり、一部書き直しならびに追記をしてあります。

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