恋を数えて – 佐藤 正午 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

「賭け事をする男とだけは一緒になるな。それが母の遺言でした」いけない、とわかっていても、幸せになれない、とわかっていても、どうしても好きになってしまう相手がいる。自分の気持ちもわからぬまま、寄り添っていくこともある。いつかせつない思いを抱えることになると予感していても…。港のある地方都市を舞台に、夜の街で働く秋子の、やるせなくも静かな日々を描いた、いとおしい恋愛小説。

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書評・レビュー・感想

物語は、バーのホステスとして働く秋子の7年間の遍歴をつづったもので佐藤正午の小説がみなそうであるように、ここでも日常の静かな時間が、丁寧に積み上げられている。ゆるやかに時間が流れる穏やかな佇まいが印象的だ。
男たちと知り合い、同僚のホステスと交流し、そして兄とは節目節目で、連絡を取り合い、お互いの境遇をそれとなく探り合って亡き父母の話をする。この秋子という主人公は、幸薄で、とくに男運が悪く、不運な目にあっているが、でも見落としてはいけないのは、不幸な出来事が襲っても、彼女は彼女なりにしっかりと自分の道を選択していくところだろう。
どこかで自分の意志を曲げたという後悔もない。いまいる場所がいちばんわたしにふさわしいのだと。その秋子のつぶやきには、ひとりでいることの寂しさと哀しさはあるけれど、それと同時にある種の心地よさと充実感もまた感じ取れる。
声高に女性の恵まれない環境や女性の自立を訴える内容ではない。著者は、秋子を賛美するわけでも、徹底的に運の悪さの原因をえぐるわけでもなくあくまでも等身大に描き、読者にそっと差し出すようにして物語りを終わらせている。
佐藤正午の小説はかなり好きだ。何冊も読んだことがある。なんとなく今回の本書は今まで読んだものとは異なった印象がある。佐藤正午は毎回静かに、ゆっくりとした舞台を用意し、そこへ登場する人物の心情をうまく非常になめらかに表現している。
今回は非常に悲しげな雰囲気が全体を包みつつ、何かいいたいのではないか何か訴えたいのではないかと思いながらページをめくった。やはりという当然というか佐藤正午はそのような押しつけがましさはない。しかし何かいいたかったんじゃないかという思いが読後に残った。なんだったんだろう。
(過去ブログからの転載シリーズ)

本エントリーは、過去に運営していたブログから転載したものであり、一部書き直しならびに追記をしてあります。

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