男の服装(お洒落の基本) – 落合 正勝 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 10 分

男の服装 お洒落の基本
落合 正勝
世界文化社

お洒落になるためには、まずクラシックなスタイルを覚えるべきです。それが男の装いの基本だからです。基本を覚えず、いろいろ試みても、お洒落は上達しません。なぜなら、お洒落は学習で、学習を基本を覚えなければ上達しないからです。
どんな風にお洒落をしていいか分からないという人たちは、僕にいわせれば、学習を怠っているためで、これは単に本人の怠慢である。スーツを着ることは習慣に過ぎないが、お洒落は学習によるひとつの成果で、学習の条件は反復による上達だからだ。際限のない繰り返しから、何かを習得するという意味では、スポーツを習うことと同じだ。
投資すべきものの順序の原則は2つある。第一に、流行がないもの、もしくは流行が目立たないもの。第二に、そのものの必然性である。つまり、長持ちするものにまず投資し、消耗するものは後回しにする。これは必然である。
この原則からいくと、第一に投資すべきものは靴以外にない。日常的に身に付けるものの中で、靴が唯一革製で、革製品は一生モノに値するという事情もある。
次に投資すべきものは、ネクタイだ。ネクタイには流行があると思う人もいるだろう。これもうっとうしい認識である。流行のそこにはベイシックなものが必ず存在する。ベイシックはクラシックと同義だが、もっと根深いものである。70年前のネクタイは、長さ=150cm、大剣の幅=9.5cm、首周りの幅=3cm、これが理想的な数字である。現在の流行のデザイナーのタイは、長さ=140cm、大剣の幅=10cm、首周りの幅=2cmであり、これはクラシックとベイシックを学習しているからこのようなプレゼンテーションができるのであり、流行につながるのである。しかし、今後どんな流行がこようとも不変の形は70年前の数字である。
靴ははじめは見るだけ、買うのは後でいい。靴を見て頭の中で具象化する必要がある。たくさんの靴を見て、自分に原初的なイメージを植え付ける。甲の長さ、底の厚さ、穴飾りのデザイン、腰の部分の高さ、革の光沢まで頭に叩き込む。伝統的な靴とは、だいたいこんな外見をしているのだと分かってくる。何度でも繰り返して、しつこく見る。なかでも光沢がいちばんわかりやすい。なめしがよければ、靴は鈍く光る。イタリア人は、ショウウィンドウにディスプレイされた靴を身動きせずに7分から8分真剣に見ている。あまりに熱心なので、端で見ていると危ない感じもする。日本人はそんなに眺めない。イタリア人のようにとはいかぬまでも、靴を深く観察する癖をつけることは大切である。本質に迫ることができる。甲のカーブだけでもいい。何かが見えてくる。

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書評・レビュー・感想

・ジャストサイズの靴の探し方

靴屋でまず両足に靴をはき、リラックスした状態をつくり、直立する。鏡はまだみない。鏡を見てしまうと視線が足にむき、自分に似合うかどうかが優先される。靴は似合う、似合わないより、まず履き心地だ。直立し、革と足に見合いをさせたあと、そこらを歩き回る。意識を集中すべき点は2つある。
1.靴のトップラインがフィットしているか?

トップラインとは、履き口だ。サイズがあっていない場合、トップラインはゆるく、頼りない。歩くたびにふかふか口をあける。ジャストサイズの靴は足首をしっかりサポートし締め付ける。

2.つま先の捨て寸が適正か?

捨て寸とは、歩行時の足の前後運動のための余裕である。捨て寸がないと、足が靴のなかで前後に遊べない。快適な歩行のためには、靴のなかで足がいつも前後にゆるやか動く必要があるのだ。捨て寸は通常10mm程度だ。足を靴の中でもぞもぞ動かして確かめる。すべての足の指をそっと包み、かつトゥの部分に若干の余裕がある感じがよい。トゥの部分が低い靴になるほど、捨て寸はやや長くなる。長すぎると疲労の原因になる。

次に、自分のかかとが靴のかかとに食い込まないか、余らないか留意する。甲の部分の圧迫感の確認も大切だ。少しでも圧迫されていると感じたら、その靴は即座にあきらめる。甲への圧迫はすぐに痛みにかわる。圧迫感を感じる靴はあきらめたほうがいいというのはそういう理由だ。かかとは、たいていの場合、もともと窮屈で、少々痛みを感じるくらいのほうが、後々ぴったり足を覆ってくれる場合が多い。

・ネクタイの柄

柄は大別して3つある。
    1.ごく小さなシンメトリーな柄
    2.ストライプ柄
    3.その他
ただし、ここでは無地は除いてある。無地は素材と作りの判別ができないとありきたりのお洒落になってしまう。どうしても無地を締めたいという人は素材から入る。35オンス以上のシルクか上質なカシミアやニットだ。日本でかえば、2万円以上はする。色は紺を選べば間違いない。
なぜもっともクラシックなネクタイの柄が紺地に白のピンドットなのか?ドット(点)は人類初のアートであり、図形の原点である。秩序を備えた点は、人にそのまま秩序を伝達する。ドットが細かくなればなるほど、秩序に密度が加わり、より秩序の効果を増していく。細かな水玉のタイが、他人に好印象を与えるのはそのためだ。好印象とは秩序で、秩序は上品な装い、落ち着いた装い、ネクタイだけが浮き上がらない装い、すなわちクラシックスタイルに通じる。濃紺と白という対照的な色の配分が、ある緊張感を生み出す。クラシックという思想を体現するために、この緊張感は不可欠である。
ストライプは、もともと共同体的な発想から誕生した。ヨーロッパでは、秩序からはみ出した囚人、死刑執行人、売春婦、私生児がストライプの服を強要された。ある共同体に属することを識別するためだ。現在、あちこちのクラブやスクールで採用されている英国のレジメンタルタイも16世紀の陸軍の旗から誕生した。ストライプの色の組合わせがわかりやすかったのだろう。ついでながら、ストライプ柄は、大きな無地素材がつくれなかった時代に布をつぎはぎしているうちに誕生したと伝えられている。そのほかのあまたの柄については、クラシックなスタイルを目指すならばさけるべきだ。

・20代のお洒落

クラシックなスタイルは、人を選ばず、どこへ身に付けていっても違和感はない。できれば、クラシックなスーツは20代のうちに徹底的に着こなす。細かなところは無視する。ショルダーライン全体と袖つけ部分がわかりやすい。袖つけが鋭角的にストンと腕につながっている服は英国スタイルだが、その角度が急であればあるほど、ウエストの絞りはきついほうがいい。基本的な英国スタイルだ。
日本製の英国クラシックスタイルは概してウエストの絞りが緩い。日本人の体型から考えればウエスト位置をややあげて、もっと絞りをきつくしてもいいと感じている。イタリアンスタイルは、テーラーの流れを汲む本国産に頼ったほうが間違いない。ブリオーニはもっとも安定しているが、価格もそれだけに高い。ラヴァツォーロはイタリアブランドにしては比較的安価だ。
今やスーツは、1万円から50万円を越えるものまでさまざまである。安価だからといって、僕をそれを否定しない。安価なものを好む人はたくさんいる。それで間に合っているなら、別段ほかのスーツを知る必要はない。その人の人生とは関係のないことだからだ。テニスや釣り、ビリヤードやポーカー、音楽を知らずとも人生に支障をきたさない。それと同じことだ。だが、お洒落を志そうと思っている人たちは、理想的には10万円を超えるものがよい。国産の場合だ。
現在、日本に出回っている既製スーツは、
    ・超安価なスーツ
    ・西洋のデザイナーブランド
    ・日本のデザイナーブランド
    ・西洋のライセンスモノのデザイナーブランド
    ★西洋のクラシックなスーツ
    ★西洋のライセンスモノのクラシックなスーツ
    ★日本のクラシックなスーツ
この中でクラシックなスーツは★をつけたものである。まずその中から選択する。いちばん高いのは西洋のクラシックなスーツである。15万円から。僕ならまずそれを購入する。上手に身に付ければ、10年は持つ。僕は11年前のラヴァツォーロのツーピースをまだきている。
日本のセレクトショップとしては、ビームスとユナイテッド・アローズは、既製服として完成度が高い。よく研究しているなという感じだ。クラシックなスーツを選ぶとき、好き好きを問題にしてはならない。本当は思い切ってイタリア原産の高価なスーツを1着だけでも無理して購入すればよいのだが、懐と相談しなければならないときは、10万円を超えるスーツが良い。できるだけ早いうち、20代のうちにクラシックスーツの何たるかを身をもって体験する。

・鞄の美しさと実用度

日本の鞄にもなかなかなものがある。西洋の鞄ばかりコレクションしていたが、大峡製鞄の鞄に出会い、大いに反省した。ランドセル作りで知られている。学習院初等科のランドセルだ。縫い目はイタリアのフルハンドの鞄より、ピッチが細かい。トランクのような大きなものはなく、ビジネスユースの鞄が主体だ。デザインは英国的だが、少しやわらかくひねっている。
鞄の絶対条件は、革である。革で包むから鞄になる。
鞄選びの5つのポイントは、
   ・なめし
   ・コーナー
   ・とって
   ・錠前
   ・ミシン目
である。非常に重要なことである。鞄の重量を気にする人は、上質な鞄を携える資格はない。丁寧に作られた鞄は、補強が多いため必然的に重量がある。僕は、重い鞄を信頼しているので、軽い鞄は持っていない。鞄をそろえる順は、一般的には、まずビジネス用のアタッシュだ。黒と茶をそろえる。靴の色に合わせて使い分ける。あまり薄いアタッシュは使い勝手が限定される。
鞄をおろそかにしてはいけない。旅を楽しむためには、まず鞄である。美。実用。耐久。それが鞄の絶対的条件である。選択はどれを重要視するかである。目的が違えば、道具も異なる。ポルシェのトランクに荷物を積むのか、トラックの荷台に荷物を詰め込むのかだ。まずそれを考える。

これは男のファッションの聖書だと思う。一人の男性に一冊必要である。著者はお洒落が学習だという。その通りだと思う。世の中にはファッションリーダーなる言葉がでて、それに似たような服をきて周りとあわせることをお洒落だなどという風潮がある。特に男性の場合は若い時は多少はファッションに興味があっても年をとるとともにその情熱も色あせていき、とりあえずといった感が強くなる。それは個人的には学習を怠っているだけだと思う。が著者はそれを否定しない。そういう人もいるとしているが、お洒落を志す人ならそれではだめだという。まさにそうかもしれないと考えを改めようと思った。
ファッションの基本は知ってるようで知らない。お洒落になるためには、基本を反復して上達するしかない。これを頭に叩き込むことで本書が生きてくるような気がする。
(過去ブログからの転載シリーズ)

本エントリーは、過去に運営していたブログから転載したものであり、一部書き直しならびに追記をしてあります。

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