苦役列車 – 西村 賢太 (書評・レビュー・感想)

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苦役列車
苦役列車

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西村 賢太
新潮社

友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。或る日彼の生活に変化が訪れたが…。こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか―。昭和の終わりの青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と因業を渾身の筆で描き尽くす表題作と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収録。第144回芥川賞受賞。

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書評・レビュー・感想

第144回芥川賞を受賞した朝吹真理子「きことわ」と西村賢太「苦役列車」を購入した

いやー読むのが楽しみ!

といっていた西村賢太の「苦役列車」である。もうひとつの芥川賞受賞作である「きことわ」は先日読んだが、好みとしては、本書の方が良かった。本書は、著者が体験したことを土台にして書かれた小説である私小説(わたくししょうせつ)である。
つまり、本書の主人公である北町貫多の生い立ちのかなりの部分は著者のものである。運送業者の家庭に生まれ、父親が強盗強姦事件で服役し、両親が離婚して3歳上の姉とともに母子家庭で育って、中学卒業後、肉体労働で生計を立てる。両親の離婚の理由は、DVと服役である。
西村賢太的リアリズムというかダメ男のリアリズムがはっきりと書かれていた。あるレビューでは銭ゲバ的な感じというのがあったが、蒲郡風太郎のようなカネに執着し、カネのためなら手段を選ばない感じではなく、あまりいい家庭環境で育たずに、自堕落かつ普通の道を踏み外したら落ち着きそうな環境に自分なりに適応していこうとするダメ男の日常という感じだった。
丁度、先日読んだ今、話題の「逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録」にも出てきた日雇人足の仕事が本書でもいい味を出していて、ダメ男の日常にリアリティを加えていた。
聞くところによると、本書は著者の他の作品と比べるとディープさがマイルドであるらしいので、他の作品も読んでみたいと思わされた。
誤解を恐れずに言えば、こういった日雇人足仕事をする人は、自身の思いや考え・印象を言語化することが苦手であることが多く、それを私小説としてこうした作品で読めることに迫力を感じた。
本書後半の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」は、著者の作品である「一夜」が第32回川端康成文学賞候補になってからの身の回りの出来事や自身の想いを文章にした短編であるが、こちらにもニヤリとさせられるエピソードがあり、ダメ男っぷりとプライドの高さが感じられ面白かった。
著者は、暴行傷害事件で二度逮捕されている。
身を削って自分の人生を作品にする作家である。
お勧め!!

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