アフリカ 苦悩する大陸 – ロバート ゲスト (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 6 分

アフリカ 苦悩する大陸
ロバート ゲスト
東洋経済新報社

アフリカの希望を誰が奪っているのか!腐敗した政府、民族対立、貧困、HIV…、停滞するアフリカの現実と問題の核心。 経済誌『エコノミスト』の元アフリカ担当編集長が書いたアフリカの現状。

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書評・レビュー・感想

本書は、ジンバブエの悲惨な状況から記述が始まる。ジンバブエは、アフリカ南部の共和制国家であり、ロバート・ムガベ大統領の独裁政権下で、「世界最悪の独裁国家」などと評される。
Wikipedia – ジンバブエ

かつては農業、鉱業、工業のバランスの取れた経済であった。特に、白人大規模農家による非常に効率的な農業が行われていた。外貨収入の半数を農産物の輸出で得ている農業国で、かつてはヨーロッパから「アフリカの穀物庫」と呼ばれていたほどであった。
しかし白人農家に対する強制土地収用政策の開始後、ノウハウを持つ白人農家の消滅、大規模商業農業システムの崩壊[5]により、農作物の収量は激減。基幹産業の農業の崩壊によって生じた外貨不足は、さらに部品を輸入で調達していた工業にも打撃を与え、経済は極度に悪化した。経済成長率は-12.1%(2002年)を記録し、経済システムは崩壊した。

独裁政権の下で、年間インフレ率は約2億3000万%など経済的には完全に破綻しており、失業率が国連の推測で94%に達するなど、再建のめどは立っていないような状況である。
多くのアフリカの国々は、独立後、ムガベのような独裁主義的なリーダーによってめちゃくちゃにされている。多くが軍事独裁または、一党独裁国家である。そして民主化するというリップサービスをしてはお金を集め、それを自分たちのいいように使うというような経緯を何回も繰り返している。
アフリカの部族間抗争の話は、なかなか実感しにくいが、これは本書を読むとある程度実感できる。まさに、部族主義なのである。有名な事例が、ルワンダのフツ族とツチ族との争いである。
Wikipedia – ルワンダの大虐殺

ルワンダ虐殺(Rwandan Genocide)は、1994年にルワンダで発生したジェノサイドである。1994年4月 6日に発生したルワンダ大統領のジュベナール・ハビャリマナとブルンジ大統領のンタリャミラの暗殺からルワンダ愛国戦線 (RPF) が同国を制圧するまでの約100日間に、フツ系の政府とそれに同調する過激派フツによって、多数のツチと穏健派フツが殺害された。正確な犠牲者数は明らかとなっていないが、およそ50万人から100万人の間[2]、すなわちルワンダ全国民の10%から20%の間と推測されている。

問題の根本は、部族意識ではなく、植民地時代に、政府が部族意識を政治的にたくみに操り、悪用した結果、部族間の対立が現在まで続くようになったらしい。もともとフツ族とツチ族も部族同士で大規模な殺戮が行われることはなかったが、一握りの悪党が政権を維持するために民族的な激情をたきつけた結果、悲惨な事態を招いていた。ナイジェリアは250もの部族があり、その部族問題は深刻である。その問題の元をたどれば、ルワンダと同じく、植民地時代にたどり着く。
アフリカの部族主義が引き起こす民族紛争は解決できないのだろうか?著者は、タンザニアの事例を挙げてやればできる可能性をあげている。民主主義国家が成熟すれば、民族紛争が解決される可能性を示唆しているが、民主主義国家として成熟するまでとても長い年月がかかるように思う。
アフリカへの援助についても大きな問題を含んでいる。海外からの援助の多くはアフリカの国民生活をよくするためではなく、一部の独裁者や政権幹部のために使われており、援助関係者をいらいらさせている。しかしながら、うまくいったケースがないでもない。本書では、ボツワナのケースをとりあげている。
ボツワナは、南部アフリカの内陸に位置する共和制国家であり、各国からの援助を慎重に検討し、提案された計画が持続可能であることが証明でき、かつ他の団体の計画と重複しないようなものだけを受入た。透明性も確保し、援助に何に使われているのか援助の提供者が視察で確認できるようにした。その結果、過去35年にわたって世界随一の経済成長を記録している。
Wikipedia – ボツワナ

ボツワナの独立以来、アフリカでは数少ない複数政党制に基づく民主主義が機能している国として知られ、政局はきわめて安定している。実際に独立以来クーデターや内乱は一度も起きたことがない。
ボツワナは1966年の独立以後、豊かな天然資源と手堅い経済政策、安定した政治状況や高い教育程度に基づき、世界最高水準の経済成長率を1980年代末まで維持し続けた。その結果、他の多くのアフリカ諸国とは異なり「世界最貧国グループ」から抜け出し、1人あたりGDPはマレーシアやアルゼンチン、ルーマニアなどの他の大陸の工業国と同クラスの世界60位前後に位置し、「中所得国」に分類されるなど、堅実な経済状況を保ち続けている。

ただし、ボツワナはエイズが極めて深刻な問題となっている。エイズ(HIV/AIDS)感染率が世界最高となっており、大統領がエイズを食い止めなければ、国は「純然たる絶滅」に直面すると嘆いている。
最終章では、アフリカの期待の星として、南アフリカに1章をさいている。W杯が開かれたことによって大きく話題になったが、アパルトヘイト廃止後に起きた失業問題により、急速に治安が悪化し、過激派による組織犯罪・テロも懸念されている。
アフリカについて一般的な知識しか持たずに本書を読んだが、理解の範囲と深さがぐっと広がったと思う。アフリカにある様々な問題やそれに対する過去の対応、そしてこれからについても。
本書の結論でも述べられているように、援助(賠償金)だけでアフリカが裕福になることは無理である。一部の石油国を除いては、先進諸国と同じように人々がお金を出して買ってくれる物やサービスを生み出していくしかない。その長年の努力が経済的な成功へ繋がり、経済的な成功が多くの場合、紛争や犯罪の解決策になっていく。今のアフリカの知る最高の1冊。

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