★★★☆☆[映画] 海辺の生と死 (レビュー・感想・解説・ネタバレ)

【この記事の所要時間 : 約 5 分

先日、奄美大島へ旅行したということもあり、せっかく奄美を舞台にした映画がやっているので、テアトル新宿に行ってきた。
見たのは、「海辺の生と死」である。

奄美大島を舞台にした満島ひかり主演の映画「海辺の生と死」が2017年7月29日から全国ロードショーしていたのでちょうどよかった。

「海辺の生と死」のあらすじはこちらを見てくださいね!

映画「海辺の生と死」は、島尾ミホの同名小説と、夫の島尾敏雄の「島の果て」を原作としている。

映画の感想としては、ちょっと長い。。。
島時間というか、ゆったりとした時間の流れを表現したいんだと思うが、間延びしていると感じた。もう少しコンパクトに100分くらいに出来たように思う。

内容は悪くはないが、島尾敏雄とミホを知っていれば、あまり驚きはない。
どちらかといえば、この出会いのあとの戦後の物語のほうが面白いと思う。

戦後の物語は、島尾敏雄の「死の棘」に書かれている。
思いやり深かった妻が夫の〈情事〉のために神経に異常を来たし、ぎりぎりの状況下に夫婦の絆とは何かを見据えた凄絶な人間記録である。

ページを開くと一行目から異様に不穏で不吉なのである。語り手の「私」は妻ともども三日寝ていないと言う。妻は「私」が十一月には家を出て十二月には自殺すると邪悪な予言者のように告げる。そして次のページに移ると、小説家である語り手が三日前に見た仕事部屋の惨状が描かれる。部屋中に「血のりのようにあびせかけられたインキ」。転がる日記帳。そこには彼の浮気が細かく書かれていた。妻はそれを見た。それがはじまりだったのだ。

妻は執拗に主人公を詰問し、弾劾する。夫は卑屈に許しを懇願する。妻の激昂は狂気の域に達し、ページを覆う暗然とした空気はギスギスと濃くなってゆく。息苦しい。読むほうも追いつめられてゆく。

島尾敏雄の名作『死の棘』はこうしてはじまる。事態はまったく好転しない。ひたすら夫を非難し、幻聴を聞いて怯え、自殺をほのめかす妻。幼い娘と息子の眼前で、疲弊した夫は狂気を装って暴れ、死んでやると叫び、物を破壊する。そうこうしているうちに生活は困窮、仕事を乞いに行こうにも妻の精神状態が不安で家を空けられず、妻子連れで出版社へ向かう。妻は妙齢の女を見るたびに夫の愛人ではないかと怯え、精神にひびを入れる……

妻と夫の神経の削り合い。狂気と正気のガチな殺しあい。ほぼ全編がそれで埋められているのだ。希望はない。だがこのおそるべき緊迫感、暗い殺気めいた吸引力は読む者を捕らえて逃さない。

改行の少ない濃密な文体で六百ページ超。一晩では読み切れない。三晩は徹夜の必要があるだろう。それでようやくあなたは、冒頭で主人公がおかれた極限状態に追いつくことになる。

という内容である。
2016年に梯久美子が『死の棘』のモデルとなった島尾敏雄・ミホ夫妻を丹念に追ったノンフィクションであるの「狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ」を出版している。

島尾ミホは、以前から文壇では、「聖なる存在」のように扱われていたが、本書で梯久美子は、島尾ミホが「自分を正当化するための物語をつくりあげた」と指摘している。膨大な資料や証人から得た情報を分析した結果が本書であり、

夫・島尾敏雄は、自らの芸術のために夫人を利用した。
妻・島尾ミホは、夫妻の「愛の物語」を神格化しようとした。

ということであったことがわかる。

アマゾンのレビューがとてもうまく表現していたので、引用したい。

昔、「死の棘」を読んだ時は、ミホ夫人の狂乱をただただ恐ろしいと思いました。しかし、本書を読んで、本当に恐ろしいのはそこではなかったことを知り、戦慄しました。文学者として壁を突き破らんと、「わざと」浮気をし、妻の狂態と家族の崩壊を記録しようとする夫、夫の小説の題材となることで新たな自分の存在価値を見出し、夫の原稿をすべてチェックする妻。「死の棘」を読んだ時は、「嫌な女」と思った愛人が、実はある意味一番の被害者で巻き込まれただけの存在であったこと。「死の棘」では、愛人について具体的なことはほとんど語られていませんが、本書ではその人の存在も明らかにされます。当時の知人友人にもインタビューをとりますが、皆が「あれは気の毒だった」「彼女は巻き添えをくったようなもの」と証言します。

島尾敏雄は、文学という業に狂い、島尾ミホは、愛の物語に狂った狂人だったのかもしれない。凡人にはわからないが。

これらをふまえて、映画「海辺の生と死」を見ると、島尾ミホの「自分を正当化するための物語」を見せられたような気もする。夫の死後、ずっと喪服で過ごすなど、夫妻の「愛の物語」を神格化するために狂人を演じ続けていたのかもしれないし、実際に島尾ミホの家系から想像すると本当に狂人であったのかもしれない。

奄美の本も読んだし、映画も観たし、旅行にも行ったので、かなりお腹いっぱいになった(笑

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