ブラックジャックによろしく – 佐藤 秀峰 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 5 分


ブラックジャックによろしくブラックジャックによろしく

超一流の永禄大学付属病院の研修医・斉藤英二郎、月収わずか3万8千円。
同大学医学部卒業から3ヶ月にして、初めて1人で患者を受け持つことになる。
研修医・斉藤は理想とかけ離れた日本の医療の矛盾に苦悩しつつも、懸命に日々を送る!
床研修制度の不条理さ、医局の都合により歪められる医療、健康保険制度の矛盾、患者や家族との葛藤などを経て主人公は成長してゆく。

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書評・レビュー・感想

1.第一外科編 – 「ブラックジャックによろしく」(1)
2.循環器内科編 – 「ブラックジャックによろしく」(2)
3.ベビーER編 – 「ブラックジャックによろしく」(3)~(4)
4.がん医療編 – 「ブラックジャックによろしく」(5)~(8)
5.精神科編 – 「ブラックジャックによろしく」(9)~(13)
TVドラマにもなった人気コミック。
TVドラマは見てない。
医療現場の実態と乖離している部分も多いということで、社会に害を与えると指摘する人もいるが、それでも情報がないよりはいいと思う。
アメリカのドラマ「ER」を観た時にも思ったが、医師という職業はかなり特殊な職業だと思う。
医師でもなく、医師を目指しているわけでもないが、2002年4月16日の朝日新聞の私の視点にあった
元金沢大学付属病院長 河崎一夫氏の「医学生へ 医学を選んだ君に問う」という文章が非常に印象に残っている。

医師を目指す君にまず問う。
高校時代にどの教科が好きだったか?
物理学に魅せられたかもしれない、英語が得意だったかもしれない。
しかし、医学が大好きだった事はあり得ない。
日本国中で医学を教える高校はないからだ。
高校時代に物理学または英語が大好きだったら、なぜ理学部物理学科や文学部英文学科に進学しなかったのか?
物理学に魅せられたのなら、物理学科での授業は面白いに違いない。
君自身が医学を好むか嫌いかは度外視して、医学を専攻した事実を受容せねばならない。
結論を急ぐ。
授業が面白くないといって、授業をサボることは許されない。
医学が君にとって面白いか否か全く分からないのに、別の理由(動機)で医学を選んだのは君自身の責任である。
次に君に問う。
人前で堂々と医学を選んだ理由を言えるか?
万一「将来、経済的社会的に恵まれそう」以外の本音の理由が想起できないなら、君はダンテの「神曲」を読破せねばならない。
それが出来ないなら早々に転学すべきである。
さらに問う。
奉仕と犠牲の精神はあるか?
医師の仕事はテレビドラマのような格好いいものではない。
重症患者のため連夜の泊まりこみ、急患のため休日の予定の突然の取り消しなど日常茶飯事だ。
死に至る病になく患者の心に君は添えるか?
君に強く求める。
医師の知識不足は許されない。
知識不足のまま医師になると、罪のない患者を死なす。
知らない病名の診断は不可能だ。
知らない治療をできるはずがない。
そして自責の念がないままに「あらゆる手を尽くしましたが、残念でした」と言って恥じない。
こんな医師になりたくないなら「よく学び、よく遊び」は許されない。
医学生は「よく学び、よく学び」しかないと覚悟せねばならない。
医師国家試験の不合格者はどの医学校にもいる。
全員が合格してもおかしくない医師国家試験に1、2割が落ちるのは、医師という職業の重い責任の認識の欠如による。
君自身や君の最愛の人が重病に陥ったときに、勉強不足の医師にその命を任せれるか?
医師には知らざるは許されない。
医師になることは、身震いするほど怖いことだ。
最後に君に願う。
医師の歓びは2つある。
その1は自分の医療によって健康を回復した患者の歓びがすなわち医師の歓びである。その2は世のため人のために役立つ医学的発見の歓びである。
今後君が懸命に心技の修養に努め、仏のごとき慈悲心と神のごとき技を兼備する立派な医師に成長したとしよう。
君の神業の恩恵をうける患者は何人に達するか?
1人の診療に10分の時間をかけるとしよう。
1日10時間、1年300日、一生50年間働くとすれば延べ90万人の患者を診れる。
多いと思うかもしれない。
だが日本の人口の1%未満、世界の人口の中では無視し得るほど少ない。
インスリン発見前には糖尿病昏睡の患者を前にして医師たちは為すすべがなかった。しかしバンチングとベストがインスリンを発見して以来、インスリンは彼らが見たことがない世界中の何億人もの糖尿病患者を救い、今後も救いつづける。
その1の歓びは医師として当然の心構えである。
これのみで満足せず、その2の歓びもぜひ体験したいという強い意志を培って欲しい。心の真の平安をもたらすのは、富でも名誉でも地位でもなく、人のため世のために役立つ何事かを成し遂げたと思えるときなのだ。

ブラックジャックによろしくで、主人公の斉藤英二郎は、よく泣く。とてもよく泣く。
性格が純粋で一直線だからなのかもしれない。
ただそういう人が医師に向いているかどうかは別かもしれない。
医学部というは不思議なところだと思う。
医学部を卒業した人のほとんどが医師になる。
(最近は、医療コンサルなどに行く人もいるようだが。)
学業と職業がほとんどイコールだ。
しかし、学業と職業がかなりイコールに近い学部は他にもある。
ではそれらの学部と医学部は何が違うか。
学業の上でのトップと職業の上でのトップが同じか否かである。
工学部を卒業した人間の多くはエンジニアになる。
しかし、工学部の教授が卒業生の就職先の社長であることはほとんどない。
知人の医師も現場では変えられないと言う。
変えられるのは、政治だけだと。

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