街場の中国論 – 内田 樹 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 4 分

街場の中国論
内田 樹
ミシマ社

1.チャイナ・リスク
2.中国の「脱亜入欧」
3.中華思想
4.もしもアヘン戦争がなかったなら
5.文化大革命
6.東西の文化交流
7.中国の環境問題
8.台湾
9.中国の愛国教育
10.留日学生に見る愛国ナショナリズム
「予備知識なし」で読みはじめることができ、かつ「専門家」では絶対に指摘しない「本質」をついてくる、内田樹の『街場』シリーズ最新刊。
日中関係の見方がまるで変わる、「なるほど!」の10講義。

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書評・レビュー・感想

中国については、「中国は日本を併合する」や「「権力社会」中国と「文化社会」日本」などを読んだなあ~というくらいしかイメージはなかったが、本書は、中国を知る上で知識としても考え方としても勉強になった。
現在の日本はかなり割り引いても親中国とは言いがたい。(政治的にも文化的にも国民心理的にも親米といえるかと思う。)
しかしながら個人的な記憶はないが、過去の日本にも親中国の時期はあった。
そしてそのような時期は、親米度はかなり低かったという。
これに対しては、「親米度と親中度のゼロサムゲーム」ではないかと内田先生は指摘している。
その都度、米中どちらかを「中華」として華夷秩序を書き換えているだけという指摘である。
なんだかちょっと悲しい話ではあるが、悲しい話ほど真実っぽく聞える。
中華思想については、「中国は日本を併合する」で少し学んだが、なかなか日本人のメンタリティにはない考え方でまだしっくりこない。ただ、中国を考える上で必要な概念であることは理解できる。
中国人と日本人の「時間意識のズレ」という点にも内田先生は着目している。

僕たちが中国の外交政策を読むときにうまくゆかないのは、「懸案の問題を解決しないまましばらく放置しておき、落ち着きどころを見る」という中国人の悠然とした構えと、とにかく「正しいソリューション」を性急に確定しようとする日本人の間の時間意識のずれが大きく関与しているからではないかと思います。

「正しいソリューションを性急に確定しようとする」というのはアメリカのやり方であり、日本はそれを取り入れているだけとも言える。これもさきほど、内田先生が指摘した「親米度と親中度のゼロサムゲーム」と同じようなもので、それぞれの時代によって、時間意識についてもアメリカ寄りか中国寄りかで日本は揺れ動いているのではないだろうか?「日本人の時間意識のゼロサムゲーム」として。昔の日本によくあった「玉虫色」というやり方がネガティブに捉えられる現代は、時間意識として親米度が高く、そのため、「どっちつかずはいけない!」「白黒はっきりつけよう!」というようなことが当たり前とされる昨今になっていると思う。それについても内田先生は以下のように指摘している。

僕たちがもう少し配慮しなければならないのは、「どっちつかず」がリスク・ヘッジのひとつのかたちだということです。「白黒をはっきりさせない」ことから「白黒をはっきりさせる」ことよりも多くの外交的ベネフィットが得られるなら、そのほうが外交政策として上等であるということです。でも、この平明な事実を認める知識人は日本にはほとんどいない。これにはテレビの影響もあると思うんです。外交上のオプションを吟味するというのは、ものすごく時間のかかる作業です。でも、テレビ番組では、ある外交政策の当否を三十秒なり一分間なりでシンプルかつクリアーカットに語ることが要求される。「Aという政策もありますが、Bという政策もあり、Cというのもあります。どれがいいとは簡単にも決められませんが・・・」というような悠長なことを言う人間は絶対にテレビには出してもらえない。

中国について考える場合、相手は理非や白黒がはっきりしないでぐずぐずしている状態がそれほど不愉快ではないということを知っておく必要があると思った。こっちははっきりさせたい!が、相手はそうは思っていないという状況が常態であるという認識の上に立つと少しだけ中国についての理解が深まったように気がした。
要再読!

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