武士の家計簿 – 磯田 道史 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分


武士の家計簿武士の家計簿

第1章 加賀百万石の算盤係
第2章 猪山家の経済状態
第3章 武士の子ども時代
第4章 葬儀、結婚、そして幕末の動乱へ
第5章 文明開化のなかの「士族」
第6章 猪山家の経済的選択
「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が例を見ない完全な姿で遺されていた。
国史研究史上、初めての発見と言ってよい。
タイム・カプセルの蓋を開けてみれば、金融破綻、地価下落、リストラ、教育問題…など、猪山家は現代の我々が直面する問題を全て経験ずみだった!
活き活きと復元された武士の暮らしを通じて、江戸時代に対する通念が覆され、全く違った「日本の近代」が見えてくる。

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書評・レビュー・感想

非常に面白い!下級武士から見た幕末~明治の歴史書である。
本書は著者がこの本の土台となるある古文書を発見するところから始まる。
この古文書が我々を未知の世界へと誘ってくれる。
その古文書の名前は・・・
「金沢藩猪山家文書 入払張・給禄証書・明治期書状他 天保~明治 一函 十五万円」
である。
この金沢藩の下級武士であった猪山家の家計簿によって武士の世界が明らかになる。
饅頭1個買っても記入されているような詳細な家計簿が36年分である。
「お引」と称して他家の家来への祝儀15文や親戚付合いにいくらかかったのか、葬儀はいくらなどが細かく記されている。これは学者として興奮したに違いない。その興奮の様子も本書には書かれている。
家計簿から読み解いた猪山家の歴史を語る著者。
そこには激動の時代のドラマがあった。
著者はあとがきに以下のように記してある。

読み手の側が、猪山家の人々が投げ返してくれるボールをキャッチし、「死者との対話」を可能にするのが、本書のねらいであった。死者の雄弁である。問いかければ死せる者は語ってくれる。
(中略)
大きな社会変動のある時代には、「今いる組織の外に出ても、必要とされる技術や能力をもっているか」が人の死活をわける。かつて家柄を誇った士族たちの多くは、過去をなつかしみ、現状に不平をいい、そして将来を不安がった。彼らに未来はきていない。栄光の加賀藩とともに美しく沈んでいったのである。一方、自分の現状をなげくより、自分の現行をなげき、社会に役立つ技術を身につけようとして士族には、未来がきた。

歴史の面白さをアカデミックに引き出しつつ、本にしてくれた著者に感謝。
これが新書で読めるなんていい時代だ。

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