遺伝子の不都合な真実 – 安藤 寿康 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 3 分

勉強ができるのは生まれつきなのか?仕事に成功するための適性や才能は遺伝のせいなのか?IQ、性格、学歴やお金を稼ぐ力まで、人の能力の遺伝を徹底分析。だれもがうすうす感じていながら、ことさらには認めづらい不都合な真実を、行動遺伝学の最前線から明らかにする。親から子への能力の遺伝の正体を解きながら、教育と人間の多様性を考える。

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書評・レビュー・感想

なかなか刺激的なタイトルである。

本当に「すべての能力は遺伝である」ならば、結構絶望的である。人生すべてが遺伝子によってコントロールされているような感じを受けるからであるが、本書の中ではもう少しマイルドに書かれている。タイトルはたぶん編集者がつけたのだろう。

タイトルと中身に少し乖離があるが、それでも本書は一読の価値がある。

本書で著者が言いたいことは以下に集約されるのではないかと思う。

「もし知能に遺伝的人種差があることが分かると差別に結びつくから、遺伝的差異はないことにしなければならない」と主張する人は、「実際に遺伝的差異があったら、自分はそれを理由に差別する」という優勢的態度に潜在的にとどまっているからです。そしてその主張に固執する限り、問題の本質は解決されず、事実上の優性社会、差別社会が温存されつづけてしまうのです。 もし将来的に人種その他の集団間に認知能力をはじめ、私たちの価値観に重要な位置を占める心理的・行動的形質に遺伝的差異が実際に見出されてしまったとき、私たちは倫理的に対処するすべを失います。むしろいかなる心理的、行動的形質に集団間の遺伝的差異があったとしても、それが特定の集団の人たちの尊厳を脅かしたり社会的差別の正当化に結びつかないような考え方と社会制度の構築が必要なのです。少なくともこの議論をタブー視し、価値命題にとっておさまりのよい事実命題を勝手に導き出して安穏としてはいられないのです。

実際、本書の中ではさまざまな能力が遺伝であることを示唆する研究結果を例示している。しかしながら、それでもかなり抑制的かつ遠慮がちに著者は「不都合な真実」を並べている。しかしながら、著者がいうように「遺伝的差異はないことにしなければならない」という世界に人類がこれからもずっと留まるならば、大きな困難が待ち受けているだろうと本書を読んで思った。

多くの能力は遺伝の影響が大きい、それを踏まえた上で人類が豊かに暮らす方法、社会を築いていく方法を構築しなければならない。ゲノム研究が進み、AI(人工知能)の開発が進み、最悪のケースで行き着くところはどこなのか?を考えておく勇気が必要なんだろうと思う。

なんとなくそうかもしれないと感じていたことを現実として目の前に突きつけられた感はある。

新しい社会を、より良い社会を作っていくためにもこの「不都合な真実」を多くの人に知ってもらいたいと思った。

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