個人、チーム、組織を伸ばす 目標管理の教科書 – 五十嵐 英憲 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 6 分

目標管理は人事考課の道具じゃない。ドラッカーが提唱した「部下のやる気を引き出し業績を伸ばす」という目標管理の本質に立ち返り、単なるノルマ主義とは違う、人・組織を大切にして業績を伸ばすマネジメントを解説。

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書評・レビュー・感想

現場の第一線で働くミドルマネージャーに向けた「MBO-S」を正しく運用するため指南書である。

気になった部分をかいつまむと、

 「戦略業務」 – 将来に対する種蒔き、すぐに売上・利益に直結しないが、中長期的には非常に重要な業務
 「日銭業務」 – 部門目標に連動した拒否が許されない必達業務
 「その他業務」 – 部門目標とは連動しないが職場ミッション上の業務

「戦略業務」を優先し、残りの時間で「日銭業務」をこなせるような配分にする。

 「チャレンジ目標」 – ぎりぎり達成可能な背伸びした目標、目標達成の予感があり、達成手段が60~70%見えている目標

チャレンジに拘る理由は大きく2つあり、「競争優位」と「能力開発」のためである。
チャレンジ目標が、働き甲斐を促進する。成長とは、有能感の獲得であり、有能感のレベルアップが可能性の道をひらく。

本書内に以下のような有能感の獲得に関する例が載っていた。

入社したての見習い美容師がシャンプーの基本技能をマスターした。それは1つの成長であり、うれしい体験に違いない。しかし、喜びも束の間で、すぐにまた次の成長欲が芽生えてくる。お客様の頭皮や髪質に応じたシャンプー技術の習得である。

これは難度の高い目標で、一朝一夕の習得は難しい。何百人、何千人という単位で、実務経験しなければ、身につかない能力である。しかも、経験だけでなく、研究が必要だ。ときには失敗し、お客様からも上司からも叱られる。それでもめげずに努力して、数年後には多くの指名客を獲得するまでにシャンプーが上達し、心の中には「自分は、どんなタイプのお客様にも対応できるシャンプー技術を持っている」という有能感が湧いてくる。

次はスタイリストへのチャレンジだ。シャンプーとはまったく違う取組みで、新たな努力が待っている。友達にお金を払ってモデルを頼み、ヘアカットを練習する。そんな努力の甲斐あって、スタイリストに採用された。一人前の美容師として、周囲から認知された瞬間である。承認欲求が満たされ、自己成長の手応えもズシンと感じる。美容師にとってはもの凄く嬉しい体験である。

しかし、その嬉しさは、「スタイリストに採用された」という目標達成の喜びであり、その段階ではまだ「スタイリストとしての有能感」を実感するのは難しい。有能感の獲得には、次なる目標のトップ・スタイリストへの挑戦プロセスで、カット技術の向上に向け、再びコツコツと地道な努力をやり続けることが必要だ。

このようにキャリアップ目標を追いかけるプロセスで、レベルアップの伴った「新たな種類の有能感」を獲得する。それが成長の手応えの1つの捉え方である。

前述のように、有能感の獲得には、何よりも日々の小さな努力の積み重ねが大切だが、より強い有能感を得るためには、意図して仕掛ける「大きな成功体験」が必要だ。

それは、自分の意思が相当程度込められた「極限まで背伸びした目標」を意欲的に追いかけて、目標達成を手に入れる。あるいは、いいところまで追い詰めるという体験である。

トップ・スタイリストを目指す美容師が、業界主催の技術発表会にチャレンジする。目標は優勝である。仕事の合間を縫って、新しいヘアスタイルの考案に向け、彼女をモデルに何度も何度も試行錯誤を繰り返す。「いい加減にしてよ!」と膨れっ面で睨まれても、拝み倒して工夫を続けた結果、発表会で入賞する。しかし、優勝できなかった悔しさがこみ上げて、とても素直に喜べない。悔しさをバネに再度チャレンジし、ついには優勝を勝ち取った。その瞬間の彼の心模様は優勝の喜びもさることながら、「自分にはカット技術だけでなく、デザイン・センスもありそうだ」という自分の新たな可能性に対する確信だったという。

このような大きな成功体験をいくつか経験すると、「自分は無限に近い可能性を持っている」という感情が芽生えてくる。もちろん、連戦連勝は考えにくく、ときには失敗があったり、結果が出なかったりで、落ち込んでしまうこともあるだろう。それを何とか堪えて、チャレンジを続行し、再び新たな成功体験をつかみ取る。

つかみ取るたびに、自分の可能性に対する確信は深まり、「そんな可能性があるならば、もっともっと力を磨き、自分らしさを極めたい」という思いを募らせる。それは単なるキャリアアップを超えた新たな次元の成長欲求の出現であり、その状態を筆者は「自己実現欲求の喚起」と呼んでいる。

このような「最高の自分らしさを極めたい」という自己成長の追及の世界に到達したかどうか。そういう切り口で自分の成長度合いを確認するのが、成長の手応えの2つ目の捉え方なのである。

表現方法は違うが、結局は、デール・カーネギーの「道は開ける」で書いてある内容の焼き直しである。この手のビジネス書にはありがちだが、自己啓発本の原点、古典本の凄さを改めて感じる。

つまりは、

 ・陽気に明るく行動しよう
 ・どんな不利な状況でも手持ちの武器で工夫しよう
 ・「できること」「強み」を活かそう
 ・難しく考えず、やるべきことをやって自分を高めていこう
 ・自分が自分でいることを極めよう
 ・一級品の自分になれば、新しい道が開けてくる

ということである。

それを著者は、「有能感のレベルアップが可能性の道をひらくので、チャレンジ目標を立てよう!」と言い換えている。

多くのビジネス本が、古典(ネタ本)の言い換えである非常に良い事例だった。

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