具体と抽象 – 細谷 功 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 5 分

具体と抽象の往復思考で見えてくる知性のありようとは? 永遠に噛み合わない議論、罵り合う人と人。その根底にあるのは「具体=わかりやすさ」の弊害と、「抽象=知性」の危機。「具体」と「抽象」という、人間の頭脳的活動の根本にある概念を、気鋭の漫画家・一秒による四コマ漫画つきで解説!

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書評・レビュー・感想

あー読んで良かった~と久し振りに思える本である。
本書のタイトルを見て、ぱっと手に取る人は少ないだろう。しかし、この本を手に取った人はラッキーだと思う。

世の中では最近、「わかりやすさ」を重視して、より具体的に、もっとわかりやすく、といった流れにあるが、本書では、「抽象」の重要性が述べられている。噛めば噛むほど味が出るスルメのような本である。

抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」といえます。文字通り「特徴を抽出する」ということです。要は、さまざまな特徴や属性を持つ現実の事象のなかから、他のものと共通の特徴を抜き出して、ひとまとめにして扱うということです。

本書のすばらしいところは、「抽象」の重要性が述べられているところではなく、「抽象度を高く持つこと」が大切なのではなく、「具体と抽象の往復が大切」という結論になっているところである。染み渡るように腹に落ちた。

それは、本書の中で何度も出てくる「具体と抽象のピラミッド」の往復である。

なぜ「具体と抽象の往復が大切」なのか?

それは、相手や場面に応じて、適切な抽象度(具体度)を選択する必要があるからである。これは、コミュニケーションだけにとどまらず、ビジネスや人生においても同様なことがいえるだろう。

状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションすることが重要です。「抽象的だからわかりにくい」ということがクローズアップされがちですが、じつは「具体的すぎてわかりにくい」こともあるのです。

この部分を表した4コママンガが秀逸だった(笑
また、ビジネスの中でも状況に応じて、具体レベルのものが重要なケースと、抽象レベルのものが重要なケースがあり、その見極めが大切である。そして、議論がかみ合っていないと感じた場合は、自分と相手の抽象レベルが合っているかの確認が大切である。

いまある製品に対して、「このつまみを小さくしてほしい」とか「もっと明るい色にしてほしい」といった直接目に見える「いまあるもの」への改善の要望が抽象度の低い(具体的な)顧客の声です。逆に、個別の具体的な声を抽象化した「使いやすくしたい」「他の人と違う自分仕様のものを持ちたい」「短時間で終わらせたい」といった要望が、抽象度の高い顧客の声ということになります。

具体と抽象を切り分けることで、論点の相違が見えてきます。「リーダーの意見」や「伝統」は、簡単に変えるべきでないという考え方は、「哲学」や「基本方針」のような抽象度の高いレベルのものです。一方で、それを具体的に実現させる手段は、環境変化に応じて臨機応変に変える必要があるのは必然的な流れといえます。世の「永遠の議論」の大部分は、「どのレベルの話をしているのか」という視点が抜け落ちたままで進むため、永遠にかみ合わないことが多いです。

一例をあげると、「話がコロコロ変わる」と思われている人がいたとします。これを「具体と抽象」という観点から考えて見ましょう。じつは、その人の話がコロコロ変わっているのではなく、話を聞いている側に問題がある場合が多いのです。具体レベルでしか相手の言うことをとらえていないと、少しでも言うことが変わっただけで、「心変わり」ととらえてしまいます。

前日に「A社へ行ってくれ」と言った上司が翌日になって、「やっぱりB社だ」と「急に」言い出したら、具体レベルでしか発言をとらえていない部下だと、「まったくうちの上司はコロコロ言うことが変わって困る・・・」という反応になります。

しかし実際は「心変わり」ではなく、その上司の方針が一貫していることによって起こっている可能性があります。「重要顧客のフォローが甘くなって満足度が下がっているので、その対策をしたい」とその上司が考え、つねに最善の対応が考えていたら、状況の変化によって対応策が変わるのは当然でしょう。

抽象度が上がれば上がるほど、本質的な課題に迫っていくので、そう簡単に変化はしないものです。「本質をとらえる」という言い方がありますが、これもいかに表面事象から抽象度の高いメッセージを導き出すかということを示しています。

頭の整理によくマインドマップを利用するので、中心に抽象が来て、外へいくほど具体的になるというイメージはとてもよく理解できた。

うまい短歌や俳句は、きわめて具体的なことを表現しているように見えながら、じつは「深い」抽象的なメッセージを有していることが多いのです。

「具体的なことを表現しているように見えながら、じつは「深い」抽象的なメッセージを有している」という部分は、松尾芭蕉の以下の俳句を思い出した。シンプルでありながら、抽象度を高め、練り上げられた作品である。

  「夏草や つわものどもが 夢の跡」

数学者であり、哲学者でもあったパスカルが友人に出した手紙の最後に書いてあったといわれている「今日は時間がなかったために、このように長い手紙になってしまったことをお許しください」は、「抽象の世界」をうまく表したものだと感じた。

すばらしく良書!!!!!!!!!!

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