鎮魂 さらば、愛しの山口組 – 盛力 健児 (書評・レビュー・感想)

【この記事の所要時間 : 約 5 分

鎮魂 さらば、愛しの山口組 (宝島SUGOI文庫)

日本最大の暴力団「山口組」。この巨大組織に約50年にわたって所属した元幹部で、「盛力会」会長の盛力健児氏が、自らの苛烈な極道人生と、組織の三代にわたる興亡を綴った自叙伝。

盛力氏は昭和50年代に勃発した山口組と松田組の抗争「大阪戦争」最大の功労者。昭和42年に山本健一・初代山健組組長(後の山口組三代目若頭)から盃を受けた山口組の元重鎮である。大阪戦争の最中、田岡一雄・三代目山口組組長が京都のクラブ「ベラミ」で銃撃された、俗にいうベラミ事件の報復(かえし)で先陣を切り、その後、殺人の容疑で大阪府警に逮捕され懲役16年の実刑判決を受け、宮城刑務所で長期服役した。
平成8(1996)年に出所するが、盛力氏の目に映ったのは、バブル時代をくぐりぬけてカネまみれになった「五代目山口組」の姿だった……。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

書評・レビュー・感想

2015年夏に山口組が分裂し、山健組や宅見組などが神戸山口組を立ち上げ、六代目山口組と神戸山口組の争いが全国で発生している。なぜこういうことが起こり、どういう事情があるのか?を知るために関連書籍を読もうと考え、手に取ったのが本書である。

本書は、元山口組直参「盛力会」の盛力健児氏の自伝書であるが、5年ほど前に読んだ後藤忠政氏の「憚りながら」と近い印象を持った。

「憚りながら」の感想では以下のように書いたが、

山口組の元・直参組長として言える範囲で言ったというインタビューをまとめたのが本書である。率直な感想としては、言える範囲というのはやはり、自分の都合の良い範囲ということだと感じた。本人に関する部分は嵩上げされている可能性が高いのであまり参考にはならないが、他人評はなかなか楽しく読めた。そういう意味では面白い。本当の意味での暴露は少ない。

本書では、著者本人的な「暴露」が含まれているらしいが、読んでいて論理展開がおかしい部分がかなりあった。これは、本人としては筋が通っていると思っているのかもしれないが、他人からみたらおかしいと思われる部分がかなりある。特に本人が直接聞いた話ではなく、伝聞や想像の部分は、かなり割り引いて読む必要があると感じた。ただ、本人が直接聞いた話は、事実として面白く読ませてもらった。

本書では、盛力氏が親分である故・渡辺芳則五代目のことを文中で「渡辺」と呼び捨てにしていることに驚いた。その理由については、五代目の人間性にあるとしており、「あんたは長期服役したから、あんたの極道人生は失敗や」とか「俺は田岡を超えた」といったことを盛力氏に直接言ったことなどが要因の1つであるようである。本書は五代目が逝去して半年後に出版されたものであるので、そのあたりを踏まえると、生前に出版できなかったとも受け取れる。それは生前は「渡辺」と呼び捨てにできなかったからかな?と勘ぐってしまう。

本書とほぼ同時期に同じ山口組直参の太田守正氏の「血別」を読んだが、「血別」は本書の嘘に対する告発本的な部分もあり、合わせて読むとより理解が進むと思うが、どちらかといえば、本書より太田守正氏の「血別」の方が正しい内容が多く含まれていると思った。

太田守正氏の「血別」では、本書「鎮魂」を著した盛力健児氏について以下のように述べている。

100人いれば100通りの見方があるように、たしかに事実の解釈は視点によって異なる。しかし解釈が先立って、事実を捏造してしまうのならば、それはもはや歴史と人間に対する犯罪、死者に対する冒涜であろう。これはわしの見方や、とか、こう解釈できるというのではなく、次には妄想による事実の捏造そのものが動き始める。人間の歴史を書き換える、許されざる魂の犯罪となるのだ。もっと問題なのは、その妄言の主がいわば妄想狂であり、その男の妄想の動機が「カネの組織」と呼ぶ執行部から分け前をもらえなかった、恨みつらみにすぎないところにある。(中略)盛力の場合は、単なるウソつきではない。単純なウソつきであれば、裁判で証人能力がないと不採用になるように、世間から相手にもされまい。だが、盛力は、取材の不徹底をフィクションで置き換えるジャーナリストの仮説に触発されて、みずから体験したかのごとく本気でウソを信じ込んでしまっているのだ。言っているうちに、自分ではウソでないと思い込んでしまう病気。これが彼の妄想狂たるゆえんなのだが、活字化されることで「伝説のヤクザ」が「衝撃的な内容を明かす」などとされるところが深刻である。山口組をはじめ、稼業人の世界ではほとんど相手にされない盛力健児でも、活字文化の助力があったら、それらしく見えるのだから困る。よってもって、わしが引導を渡すしかない。

「血別」と「鎮魂」の両方を読んだ後では、本書の「鎮魂」がどこまで本当なのか?と考えてしまう。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です