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無外流の剣士として高名だった亡父から秘伝を受けついだ路は、上意討ちに失敗して周囲から「役立たず」と嘲笑され、左遷された曾根兵六にその秘伝を教えようとする。武家の娘の淡い恋心をかえらぬ燕に託して描いた表題作をはじめ、身の不運をかこつ下級武士の心を見事にとらえた「浦島」など珠玉の五篇を収録。
1.玄鳥(げんちょう)
2.三月の鮠(はや)
3.闇討ち
4.鷦鷯(みそさざい)
5.浦島
書評・レビュー・感想
久しぶりに藤沢周平を読んだ。
やはりいい。
端正でいて、情に訴え、上品にまとまっている。
人間のココロの動きが鮮やかに書かれているので、品があるのだろう。
後味もいい。余韻を残し、読者にその後をゆだねる感じは、風呂あがりのような爽快さがある。
藤沢周平作品には、現代の日本人が失ってしまった、かつての日本人が持っていた(と思われる)ものが浮かび上がる。現代日本人にも、かつての日本人にもダメ人間はいたが、同じダメ人間でも肝心な部分での「さわやかさ」や「慎み」が違う。これが小説のよさにつながっているのだと思う。本当にかつての日本人にそれがあったかはまた別の話であるが、小説として楽しむには、そう思っておいた方が楽しい。